世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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21世紀21年目の特別編 感想

今年もいつも通り「春の特別編」として制作がスタートしていた矢先、3月11日に発生した東日本大震災。それにより、4月4日頃の放送まで制作が間に合わず放送延期、このまま放送中止かと思われましたが、ようやく5月に「21世紀21年目の特別編」と改題し、ファン待望の今年初のスペシャルが放送されました。

 

昨年の20周年記念コラボ企画により、賛否両論激しかったのも記憶に新しいところですが、今年からはいつも通り、縛りを儲けず、純粋にストーリーの面白さを追及した世にも奇妙な物語に。制作態度はそうであっていても、果たして作品の方はどうなっているのか……。

 

ということで、今回も以下「21世紀21年目の特別編」を見た個人的な感想を。

一年ぶりにコラボの呪縛から解かれた回ということで、あえて厳しめに付けてみました。

◆「ドッキリチューブ」★★★

2003年の「影の国」でもお馴染み、SF作家小林泰三さん原作による、ブラックコメディ(?)

 

いや~くだらない、くだらなすぎる(笑) 脱力系とでも言えばいいのか、形容しにくい妙なオチでした。真壁が酷い目に会う流れで展開が簡単に読めるので、どう落とすのかハラハラしていると、なんとも突拍子も無いというか、斜め方向から切り込んできた様なぶっ飛び具合に不覚にも笑ってしまいました。

 

放送前は、「大予言」みたいな暴走する一般市民という内容を想像していたんですが、

蓋を開けて見ると、そこまでネット批判でもなければ、人間の残酷さを描いたわけでもなく、ただただ、「1億アクセス達成のために一丸となった社員たちの奮闘記」とでも言えばいいのか。

 

何だかもやもやしつつも、これはこれでいいのかと思ってしまう、やっぱり妙な話という印象が残りました(^^;) 個人的にはヒットしなかったのですが、未だ妙な狼狽を覚えてしまっている謎のインパクトに対して★1つオマケ。

◆「分身」★★

こ、れ、は、まぁ~……凄い。見終わってちょっと感動しかけました。もちろん皮肉じゃありません。2010年代にもなって、もうこんな感じの作品に出会えることはまず無いだろうと思ってました。演出も丁寧で物語にピッタリ合っていてとても良いですね。好感が持てます。

 

ストーリーは呆気ないくらい地味な内容でしたが、何と言っても作品全体に溢れる第1期の香り。恐らく第1シリーズの様な「身近にある奇妙」路線を狙ったのであろう心意気は高く買います。でないと、これまでの作品群の傾向を見てきて、あえて今回この様な作品を映像化する意図がまったく判らないので。

 

やっぱり世にも奇妙な物語の基本的なコンセプトはこれなんですよね。ぶっ飛ぶだけが奇妙じゃないんです。……これでストーリーがもっと面白ければ個人的に名作確定だったんですが(^^;) ラストのどんでん返しがいささか急すぎた感が否めません。

◆「通算」★★★

世にも奇妙な物語ではお馴染みの、いわゆるシチュエーション物。

このタイプは王道ストーリーへシチュエーションの面白さを乗っけるのがパターンですが、本作もこのタイプ。シチュエーションは本当に面白かったのですが、いかんせんこのタイプはそれだけで終わってしまうのが欠点なんですよね(--;)

 

ゆうたろうや、小道具などコネタが効いている細かい作りは非常に好感触。机バーンの小道具が好きです。「通算の世界」を登場人物の内面や過去を抉り出すのに利用するというアイディアも工夫が効いていて○。

 

「通算」というアイディア自体も新しかったので、またの機会にこの作家の方のコメディを見てみたいですね。松平健さんのなかなか見れない演技も新鮮な印象。脚本、演出、キャスト、そつなくまとめた一作ではないでしょうか。

◆「缶けり」★

近年、特に世にも奇妙な物語の鬼門となっているホラー枠。名作、佳作の声が全く聞かれていません。

 

本作のストーリーはマズくはないんです。「缶けり」という題材と良い、一人ずつ殺されて行くと良い、ちゃんとツボを抑えています。……でも、見てて全然怖く無い、近年のはどれも演出が『ホラー風』なんですよ。やっぱり初期から13年間ホラー担当であった落合監督が抜けた穴は、8年経っても埋められないほど大きい様で…(--;)

 

それにしても、ここ最近のホラーはどれもこれも画面が青いですね!……「相棒」じゃないんですから(^^;)『現実感』がホラーには最も大事なのに、青すぎてどこか非現実感が漂いすぎてしまい逆効果な気がします。

◆「PETS」★

2005年の「美女缶」により一躍有名になってしまった筧昌也さんによる脚本監督によるファンタジー作品。

 

主演の谷村さんは、2009年にauで配信された「ロス・タイム・ライフ 第10節 猫篇」で猫役を演じられていたそうで、そちらでも脚本演出をされた筧監督によると「PETS」はそれの姉妹編なのだとか。

 

「映画並みの手間をかけて映像にこだわった」ということで、映像の完成度は5本中1番だと思います。まさか提供の部分までこだわるとは思いませんでした(^^;) こ、細かい……。まぁ、でもこの「PETS」、完成したのが昨日の夕方だそうですからね(笑) 

 

内容については「人間が犬の格好をして動き回っている」と言う映像の面白さだけで終わるのではないか、それが最も心配だったんですが、やっぱり映像の方に比重を置きすぎたかなぁと言うのが本音でしょうか。

 

ポップな映像と、ハートウォーミングなストーリーの相乗効果は抜群だと思いますが、似たコンセプトの「ママ新発売」が映像も物語も突き抜ているのとは異なり、本作は映像の派手さに物語が着いて行けてない印象でした。あえてこの様な画作りにする必要があるんだという程のストーリーのパワーが感じられなかったなぁと。

 

「ママ新発売!」の様に、世にも奇妙な物語なのかどうか非常に怪しい立ち位置の作品。あっちは奇妙らしさがありましたが、本作は……うーん、なんとも言いがたい(^^;)

 

番組のコンセプトからかなり逸脱している様な気もする反面、奇妙といえばまぁ奇妙。感想を言うのが難しいですね。

◆ 総評

全体の評価としては★★。思っていた以上に大人しいものばかりでしたね……うーん。震災前から脚本が完成していたので、特に何かに配慮したという事はないのでしょうが……。

 

昨年のコラボ特集と比べ、今回は制作に対する態度は100点満点なものの、引っ掛かりのある作品が今回1本もなかったのがちょっと残念というか寂しかったですね。「21世紀21年目の特別編」と改題しながらも、それらに関して番組内で触れなかったのもちょっと不完全燃焼の感。

 

一方では「ネタ切れ」「マンネリ」と言われ、また一方では質の低いSF・ホラー番組の代名詞に使われ、それでも(私を含め)たくさんの視聴者の心を離さないこの番組も、今年ではや21周年。

 

思えば、この21年間、幾度の感動と失望を味わいましたが、今となっては全てが懐かしい記憶。過去には知人から「もっと役に立つ事に力を注げば良いのに…」と冷たい事も言われました(--;)、が、近年では珍しい、ストーリーの面白さを追求しようとする姿勢が大好きなので、やはりこれからも気力の続く限り、奇妙な世界の深遠までズブズブと入り込んで行きたいと思います。

 

スタッフの皆さん、制作お疲れ様でした。評価は厳しめですが、全身全霊を込めてじっくり堪能させていただきました。次回、秋の特別編もよろしくお願い致します!

《4/15》追記

改めて見直して見ると、「分身」はより好感を持てました。ラストまで淡々としすぎているのが難ですが(^^;)

 

ネットでもブログ、mixiツイッターなどで何百人もの方の感想を見ましたが、全部高評価の方もいれば、親の敵みたくズタボロに貶す人もおり、多種多様。もっとも評価がわかれていたのは「PETS」。こういう作品は後々残ると思います。

 

後、気になったのは、何故か前半2話を「ネット批判」だと怒っている方が結構いたこと。「ドッキリチューブ」はまだわかりますが「分身」までも怒っているのはいささか疑問。別にマスコミを称えている訳でもなく、ネット社会なら身近にありそうな題材だと思うんですが…。ネット社会の負の面が出たことに対して我が事の様に怒っている方、結構いました。利用者側の問題だと思っているので、個人的にはちょっと理解しがたい物がありましたね(--;)

 

他は、やっぱり過去の名作を懐かしむ声も多数。ホラーで名前の挙がる作品が落合監督の作品ばかりなのは何だか哀しいです。

 

また「なんでこれを映像化したのか」と言う意見も結構ありました。ズバリ言ってしまえば、近年は凄いどんでん返しの作品なんてそうそうないため、面白い物語の設定、時代を反映する奇妙な設定を評価しているそうです。なので「物凄い傑作だから映像化された」という訳では、多分ないと思います。もちろん、全部が全部そう言うわけでは無いのでご安心を。

 

しかし、何だかんだで世にも奇妙な物語の人気の高さをまざまざと見せ付けられました。果たして視聴率はどれくらいになっているのか、その辺も期待したいと思います。