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今年も無事に放送を終えた『'26夏の特別編』。今回はフジテレビ問題が発生する前に放送された『'24冬の特別編』から、およそ1年半ぶりとなるオール新作SPかつ、35周年というアニバーサリーイヤーが終わり、40周年へと向かう大事な第一歩目。
というわけで、今回も個人的な感想をば。(※ 評価は星5つが最高となっています)
「マザーズオークション」★★
阿部サダヲ、宮藤官九郎らを輩出した大人計画所属の細川徹監督を招いた、今回の外部ディレクター枠。脚本の伊達さんも、2017年の番外シリーズ『SON-TAKU』から9年経ち、ようやく本編初参加となりました。
さて、率直な感想としてはずいぶんシンプルな構造の物語だったなと。
母親がオークションに自らを出品していることを知った主人公が、母親との関係を振り返りながら自分自身を見つめ直していく……。この「オークション」という要素を、母親の家出などに置き換えても普通のドラマとして成立しそうなプロット。全体の雰囲気もツボを押さえた作りで、一見突飛な内容を装う反面、このストレートさには、良い意味で裏切られました。
ただひとつ気になってしまったのは、やはり終盤のどんでん返し。
この手の作品は、"親が奇妙な企業や店によるサービスを利用していた"というオチになるのが定石なところを、本作では仲間内の企みという、ごく狭い範囲の出来事に収束させたわけですが、この着地点は少々無理があるのではないかなーと。
というのも、本作の肝である「母親がオークションに出品されている」という出来事は、奇妙な力が働いたわけでも、特殊な企業のサービスでもなく、単なる一般人がオークションサイトを使って勝手に行っていただけ、ということになりますよね?
画面を注意深く見ると、オークションサイトに『マザー』のカテゴリが存在することから、人間の出品が可能な世界観であることが読み取れ、「規約違反で削除されるのでは?」「ネットで騒がれるんじゃないか」といった現実的なツッコミは一応回避できます。
が、そうなると『主人公が偶然出品を見つける』『外部のコレクターが一切介入してこない』『母親を入札するために主人公が仕事を始めようとする』など、(ある程度の誘導を用意していたとはいえ)多くの不確定要素を前提にした計画であることから、「息子を更生させるための作戦にしては、あまりに回りくどくないか?」「母親が重病を偽るなど、もっと良い方法があるのでは?」という、さらなる現実的なツッコミが浮かんでしまい……。変にリアリティのあるオチにしたことにより発生するこの辺の不自然さが、どうしても気になってしまいました。
というわけで、作品自体の雰囲気は好印象であったものの、変に現実的な落とし方による違和感分を差し引いて★2つ。ここは多少ベタでも、"ニート更生サービス"を利用していたオチにした方がよかったのでは。奇妙な世界って、この辺の塩梅が実に難しいですよね。
「遺体は一体……」★★★
脚本は、かつてピン芸人として『エンタの神様』『R-1ぐらんぷり』等に出演経験のある我人祥太さん。主演は、これまで出てそうで意外と出ていなかったベテラン俳優・上川隆也さんという異色の組み合わせによる1本です。
今回のSPの情報を見ていく中で、最もどう転ぶか読めなかったのがこの作品でした。
ミステリーなのか、ブラックものなのか、それともコメディなのか……歴36年のマニアを持ってしても、この傾向の読めないトリッキーな導入は、実にワクワクさせられるもので◎。
実際の放送を見てもその不可解さは変わらず。はたして桜庭の妄想なのか、そのフリをした特殊な任務についているのか……終始、見る者を油断させない丁寧な作りで、非常に好感の持てるストーリーだったのでは。終盤の銃撃シーンに至っては別なサスペンスドラマを見ているような感覚にもなってしまいました(^^;)。
……というか、ここまでのどんでん返しの数(私の計算では6回)は、恐らく歴代最多なのでは?
ただ、本作が途中からどんでん返しの応酬を軸にした構成である事がわかってくると、どうしても次々繰り出されるシーンが"さらなるどんでん返しへの前フリ"に見えてしまい、以後それぞれが"回収を待つ時間"のように感じて、最後まで乗り切れなくなってしまった部分も若干。
この辺は名作「女優」のように、そう感じさせる隙を与えない短いテンポで畳み掛けることが重要だと思うのですが、どうしても4話編成の長尺だと間延びした感が出てしまうなぁと。もう少しコンパクトな尺でも見てみたかったですね。
最後まで飽きさせないよう、十二分にエンタメしている部分は高く評価するものの、面倒くさいマニアの、面倒くさいこだわり分を差し引いて★3つ。それでもこういう意欲作は、今後もまだまだ作り続けていってほしいものです!
「実家じまい」★★★★
2014年に放送され、今なお人気の高い名作ホラー「墓友」の脚本演出コンビが、12年ぶりに復活した団地ホラー。フリークの間では、2代目ホラー担当として定評のある松木創監督の、2年ぶりとなる復帰作でもあります。
で、私の感想ですが。もう本作は、この一言に尽きるでしょう。
松木監督、ノリにノってるな!と(笑)
ご自身のX(旧:Twitter)でも、かなりの自信作であることを匂わせていましたが、まさに言葉通りの力作。ゾクッとする構図やカットの数々はもちろん、シナリオ面も、団地・毒親・宗教などの要素をごった煮にした内容でありながら、ちゃんと"奇妙"なホラーになっているんだから不思議ですよね。"しまう"というキーワードひとつに、ここまで多様な意味を持たせてくるとは……。
ほか、『エコエコアザラク』や『らせん』で貞子を演じた"平成のホラークイーン"・佐伯日菜子さんを母親役に起用というのも、ホラーファンとしては思わずニヤリ。ゾッとするラストシーンも、『学校の怪談(2000)』の名作「恐怖心理学入門」が脳裏をよぎったのは、恐らく私だけではないはず。
松木監督は、往年の『世にも』ではあまり扱ってこなかった『湿度のある王道ホラー』的な要素をあえて番組に取り入れる試みを行っているように見え、初代ホラー担当の落合監督の作る乾いた心理ホラーをこよなく愛する保守派の私としては、そのアプローチにかなり否定的な見方をしていたんですよね。
ところが、近年はご自身の中でもちょうどいいバランスを見つけられたのか、唯一無二の松木ホラーという世界観をいい感じに確立し始めているなと。本作はまさにその集大成といった趣き。
松木作品は、毎回強烈な個性をフルスイングでぶつけてくるため、個人的に当たり外れの振り幅が非常にデカい印象ですが、今回は文句なしの久々のヒット。相変わらずやりすぎじゃないか?と思う部分もあるにはありますが、そこが監督らしさでもあり……難しいところ(^^;)。
というわけで、2代目ホラー担当の面目躍如となったことに加え、久々に苦すぎる余韻を味あわせてもらった攻めの姿勢を評価し、★4つ。SNSを見ても、かなり好評のようで何より。どことなく映画「ヘレディタリー/継承」を意識しているのかなと思っていましたが、同じように思われた方も多かったようで。
「おじさんになりたい」★★★
原作は、トーチwebにて今年1月に発表されたばかりの、やうやうとさんによる同名の短編マンガ。今回唯一の原作付き作品となります。
私は元々、できるだけ前情報を入れずに視聴したいタイプなので、原作の緩いイラストから受ける印象のみで『奇妙らしいシュールコメディ』なのだろうなと予想していたんですよね。そしたらまさか、こんなにも後味の悪いブラックな話だったとは……!(笑)
「つまり、やめることはできないんだね」の台詞回しにも非常にゾッとさせられて、さすが名子役の貫禄。あえて多様な解釈を残す説明しすぎないラストも、私好みで◎。当初は突飛過ぎるテーマに若干不安な部分もありましたが、しっかり世にものコンセプトに則った理屈もついていたので一安心。
ただ、原作にかなり忠実な映像化となっているので、あえて意図したわけではないのでしょうが、毒親モノが2作続くのは精神的にキツいものがありましたねぇ…(^^;)。母親と妹を守るためとはいえ、小学生にこんな決断をさせてはいけませんよ、ホント。
しいていえば、もう少しファンタジックな雰囲気を抑えてくれた方が好みではありますが、そのテイストにしっかりと濃い毒っ気を忍ばせるという、原作の魅力を最大限に引き出してくれた淵上監督の仕事ぶりを評価し、★3つ。
それにしても、『世にも』で子役が主演を務める話って、基本ハッピーエンドにならない法則がありますよね。奇妙な世界は、子供にも一切容赦してくれないようで……。
総評 ★★★★
"1年半ぶりとなるオール新作"となった今回。全体を通して、適度な捻りとブラックで奇妙な余韻をしっかり残す、多くのファンが待望していた理想的な特別編だったのではないでしょうか。
もちろん、OP・EDの短縮っぷりや、相変わらずのテラーパートの無理のあるドッキングっぷりなど文句を付けたい箇所は相変わらずありますが、ここ数年では最も番組らしいSPだったという満足感の方が僅かに勝っていて、非常に穏やかな視聴後感となりました。20年代で私の好きな『'22夏』と非常にいい勝負。
作品以外のところでは、冒頭のプロローグで電球が破裂するアバンストーリー(?)を突然絡めてきたのも、小ネタ好きの植田監督らしいファンサービスで嬉しかったですね。(※劇中「36年前にも同じ実験を~」という台詞がありましたが、その時はTVモニター。電球版は『'94秋の特別編』で行われています)。毎回苦言を呈したくなりつつも、こういうところで『世にも』っていい番組だよなぁ…としみじみ思わされてしまいます。
そして、今回はいつも2人以上いたベテランディレクターが1人のみで、20年代の常連作家も不在。プロデューサー方面でも、お馴染み渡辺恒也Pがフジを退社。さらにミーハー中村Pが一線を退き、新たに若手の村木プロデューサーがメインを本格的に張るなど、中心となるメンツもガラッと変わり、今後新たな若手スタッフらの台頭を存分に予感させる回ともなりました。
そこを十分反映してか、この夏SPは非常に意欲的かつ、昔ながらのエンタメ精神にあふれた特別編になっていたのが実に頼もしかったです。何だかんだ理屈をこねくり回そうとも、やはり『世にも』の華は、どんでん返しとブラックな余韻……これに尽きます!
この調子で次回もぜひ──そんな期待と応援の意味も込め、全体評価は★4つで。
最後に、今回もスタッフ&キャストの皆さん、本当にありがとうございました!
20年代後半の『世にも』がどうなるかまだ未知数ですが、これまでの傾向では大体4~5年ごとにメイン層が入れ替わってきたので、その一発目の回を見れば、以降5年間の『世にも』の舵取りがどうなるかを大体読むことができます。
このブログを読んでいるあなたが、今回のSPを気に入ったのならば……今後の世にも奇妙な物語、ますます期待していいのかもしれませんね?
では、また次回。
……あ、冒頭の"特番見所"(OP前の各話ダイジェスト)が今回ありませんでしたが、まさか廃止じゃないですよね?と、そこだけが心配…(^^;)。これまでも無かった事例が数回ありますが、最近は何かと仕様変更されてしまうので色々と不安なんです、はい。
◆ 毎月新作が見られる特別シリーズが登場!
さて、ED後に流れた告知で既にご存知の方も多いように、36周年を迎えた『世にも奇妙な物語』は、この度とんでもない企画を打ち出してきました。その名も──

フジテレビが運営する動画配信サービス『FOD』による、36年の歴史上初となるネット配信限定のドラマシリーズとなります!
ストーリーは全12話で、毎月最終土曜日21時に1話ずつ配信が追加される訳ですが……これはつまり、今後1年間『世にも奇妙な物語』の新作が毎月見られるということ!!
こんな特別企画がアニバーサリーイヤーの翌年に行われるなんて、あまりにも予想外のサプライズ。
しかも、既に配信中の第1話「明日から来た男」は、あの歴代演出数No.1の大レジェンド・落合正幸監督が脚本と演出を14年ぶりに担当というのですから、これまた大事件。
名前をご存知ない方でも、監督がこれまで手がけてきた「ミッドナイトコール」「モルモット」「戦争はなかった」「リフレイン」「急患」「隣の声」「時の女神」「最後の喫煙者」「トイレの落書」「扉の先」「女は死んでいない」「私は、女優」「雪山」「13番目の客」「おばあちゃん」「影の国」……などの名作群を挙げれば、その仕事ぶりが大体お判りいただけるのではないでしょうか。
そう、番組スタッフ……世にもファンを本気で狙いに来ています!!
第一報を見た時、私はてっきり『若手ディレクターと新人作家が実験的な事をやる低予算のスピンオフシリーズ』なのだろうと高をくくっていたのですが、実に甘かった!……いつだって、奇妙な世界はそんな風に舐め腐って油断している人間に平手打ちを喰らわせに来ていた事をすっかり忘れていました。
もしかしたら以降も、レジェンド級のあの人やこの人も登場するのでは……と期待が十割増。なにせWeb限定作品ですから、地上波ではなかなか作れない尖った作品も見られそうで、『世にも』の新たな挑戦に胸を高鳴らせるばかり。40周年に向けて、まだまだ世にもスタッフ、やってくれそうです!
……ただ、サブスク限定ということで、視聴にはプレミアム有料会員への登録が必須となります。最も安いライト会員でも月額976円(広告付)と、金銭的に余裕のない若いファンにはなかなか厳しいかと思いますが、本シリーズは期間限定配信ではないので、ある程度まとまった段階で加入するという方法もあります。(忍耐強い方なら、1年後まで待って一ヶ月分のみ払う…というのも手です)
年季の入ったファンの方でも、有料作品ということで二の足を踏む方が相当数いると思いますが、本作の成功如何によっては、さらなるシリーズの継続だけでなく、旧作配信追加への足がかりや、従来のTVSPへの良い影響も期待できるかもしれません。迷っている方は、ぜひとも加入をご検討されてみては!
世にも奇妙な物語 FODの特別編は、FODにて絶賛配信中。
これから1年間に渡って繰り広げられる新しく"奇妙"なシリーズを、どうぞお見逃しなく!


