世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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'12秋の特別編 感想

22年目を迎えた世にも奇妙な物語 秋の特別編。皆さんはいかがだったでしょうか。

人気アイドルの出演、芸人原作&脚本、落合監督の復帰と、話題性は抜群だった今回のスペシャル。

 

今回名作が出るか珍作が出るか、それとも不作なのか、じっくり楽しんで視聴しました。

では、今回も個人的な感想を以下に述べてみたいと思います。

◆ 『心霊アプリ』★★

絶対的エース前田敦子が卒業した今、現在AKBの頂点に立つ大島優子初主演のホラー作品。数々のホラー映画に出演経験があるためか、こういう場合にありがちな演技面での違和感は見ててあまり感じませんでした。

 

ストーリーとしてはいたって王道。調子に乗って酷い目にあう因果応報パターンは定番中の定番ともいえますが、構成に無駄が無いためテンポも良く、ここ数年のホラー作品では久々にちゃんとした物だったかと思います。

唯一放送後までわからなかった脚本家ですが……番組のホラーで超が付く人気作「見たら最期」を手がけた寺田敏雄さんだったんですね!こんな所にも20年ぶりに帰ってきた方がいたとは。いやぁ驚きました。

 

後、死んだ人が次々と霊として出てくるシーンは……もうちょっとどうにかならなかったんでしょうかね~(笑)

 

窓の向こうの巨大な顔などチープな感じにちょっと笑ってしまったのと、ラストに繋げるには浮いてるような気がして、すごくすごく勿体無かった気がします。個人的には変に恐怖を煽るより、もう少しウェットな方面へ攻めていった方が良かったんじゃないかなぁと。今回も“演出が勿体無いホラー”で★2つ。

 

思えば2007年に『才能玉』の中で「会いたかった」が使われた頃から考えるとAKBも嘘の様に売れてしまいましたね~(^^;)当時「この曲、確か秋元康が作った秋葉原の……」くらいの認識でしたが……いやはや時の移り変わりは激しいものです。

◆ 『来世不動産』★★

バカリズム原作&脚本&助演というこれまでにない試みがなされたコメディ作品。

元芸人さんが脚本を書かれたことはありますが、現役で活躍中の方が脚本を務められたのは初めてのこと。

 

バカリズムさんのシュールな笑いは結構好きなので、一体どのような内容なのか結構期待していましたが、全体的にふわふわしてる、"牛"みたいな物語だったなぁというのが大雑把な感想でしょうか。ミル貝やセミなど、笑った箇所も結構あったんですが、個人的に期待していたほどではなかったですね。

 

もっとシュールな掛け合いの面白さとかで魅せる作品だと思っていた所、思ったよりのんびりしてた感じでちょっと肩透かしを食らったような印象です。とにかく最後まで奇妙と言えば奇妙。シュールといえばシュール。まさにバカリズムさんらしい芸風を反映した作品ですね。

 

これといった面白さを見出すのはその人に寄ると思うので、結構人を選ぶ作品には違いないでしょう。作品として見たところの全体的な評価は★2つですが、私はこういう世界観嫌いじゃないです(笑)

◆ 『蛇口』★

原作は小池真理子さんの同名作品。

 

シュールな設定と導入部で一気に引き込まれたんですが……う~ん……。

こういうのは心理描写で引き込ませてゆく小説の形式で読んだ方が面白いでしょうね。

 

あと結構ビックリしたのは……今って血や水をCGで描くような時代なんですねえ。

やりように寄ってはテーブルや壁に管を通して流すのは難しいことではないと思うんですが、ロケ場所が汚せないとかでああいう感じになったんでしょうか。なんか違和感が凄かったです。

◆ 『相席の恋人』★★★

 

男性が脚本をされている為か、変に"感動感動"しておらず、爽やかなハートウォーミング物だったかと思います。未来の恋人と相席するという、簡単に思いつきそうでなかなか思いつかないシチュエーションは個人的に好きですね。

 

ハートウォーミング物なので、こういう物語が嫌いな人は結構いると思うんですよ。まぁ、未来の恋人が出てくる時点でどうなるかは容易く読めますし、その展開もベタといえばベタです。

 

しかし、普通ならその辺りをもっとねちっこく描いてお涙頂戴にするのを、本作ではほどほどに抑えており、爽やかな気分でラストまで見ることができました。大きく見れば可もなく不可もなくな作品です。

 

しかし、素敵な作品でした。★3つ。

◆ 『ヘイトウイルス』★★★★

原作は「どつきどつかれ生きるのさ」以来4年ぶりの映像化となる漫画家うめざわしゅんさんの同名作品。

 

演出は世にも奇妙な物語四天王の中でブラック・ホラー系の名手と名高い落合正幸監督。「急患」「時の女神」「雪山」「13番目の客」「おばあちゃん」などなど、手がけた作品は歴代最多の35作。

 

本作は、そんな監督が2003秋の「影が重なるとき」を最後に制作会社を退社し、フリーになってから実に9年ぶりの復帰作です。

 

どうもここ数年は上っ面を撫でただけの様な怖い雰囲気が全く出て無いホラーばかりが増えていて、思えばここ5年ほど新作が放送されるたび「落合監督帰ってきてくれ~!」ばかり言ってたような気がします。今回はブラック系作品でしたが、要所要所で『これぞ世にも奇妙な物語』という落合監督らしい画が見られてファンとしては嬉しかったです。

 

今回ネットを見ていても、コアな世にもファンの間で監督の復帰が一番の大ニュースだったようで、私も同じようにようやく復帰してくれたという事実だけもうむせび泣くほど嬉しいです。泣きませんけどね。

 

落合監督復帰というだけでもう☆5つ確定しても良いくらいの気分なんですが、それだけで評価するわけにはいきません(^^;)原作を既に読んでいたのでそこのイメージから見ると、ちょっと全体的に物足りないかなぁというのが第一印象でした。

 

テーマも大筋もほぼ忠実なんですが、原作のラストは静かで、どろりとした粘着質の後味の悪さが全面に押し出されているのに対し、本作では、そこまでの後味の悪さが感じられなかったので、原作を知ってる者としては物足りなさを感じてしまいました。まぁこの辺りは主人公がヘイトウイルスに感染する当事者側として改変された辺りから仕方のないことかもしれませんね。

 

演出面では文句なし。ストーリーもツボを抑えて社会派な一篇で楽しめました。★4つ。

◆ 総評

以上を踏まえて総評ですが、まずは前回死ぬほど不評だったCM前後のロゴが無くなっていたのが本当に安心しました。さらに細かいところでは特別編のサブタイトルも、これまでのあらすじを列挙した様な物からシンプルな物になっていた所も好感度が高かったです。

それに加え、寺田さんや落合監督の様な初期スタッフの起用など、今回は一部に原点回帰的な側面も感じられました。

 

全体的な評価はジャンルのバランスも良く、視聴後の印象はすっきりしていたので★★★と行きたい所ですが、それに加え、良い所は原点へ帰るという『意識』が感じられたので一つおまけして★4つ。

 

あと、個人的に思った事は、やはり10年代の世にも奇妙な物語は新たな段階へ進もうとしてるんだなと確信したことでしょうか。今回放送された5作品には、アッと驚く、又は制作側が驚かせたいと思って入れている様な"どんでん返し"は全くありません。大抵は良くて『まぁ、そう来るだろうな』とか『あ~そういうことね』というくらいの非常に落ち着いた物ばかり。

 

近年も、原作がある作品にしてみても見てみると「大したオチも無いのに何故映像化したんだ?」と思う事がよくありまして、2000年頃の資料では『意外などんでん返しはそうそう作れないので脚本は奇妙な設定の良さを見ている』というスタッフの発言があるわけですが、これからはまさにこの『奇妙な設定の面白さを見せていく』のがメインになっていくのではないかと思っています。

 

文句を言うのは簡単ですが、いざ自分でやってみると誰も思いついていない意外なオチなんてもう存在していません。なんせ22年間、数千本ものアイディアが生み出され、数多くの本・漫画で原作を探し、その結果こういう状況になっている所から見ても、そうそう斬新な20分で見せるストーリーなんてもの範囲がいかに限られてきているかが判ります。

 

2000年代中期は無理やりなどんでん返しが増えたなんて声が当時結構聞かれていました。そして今そういう声は聞かれません。その代わりに『奇妙なシチュエーションに置かれた人間それ自体から発生する恐怖、可笑しさ、感動』を描いている作品が増えています。さらにここ数年作家の間ではタブー扱いの夢オチや、曖昧なラストが出てきているのも、今は"意外性"に重きを置いていないという事の証左なのでしょう。

 

現在は『世にも奇妙な物語といえば意外なオチがあるドラマ』というのがファンの共通イメージになっています。これからはそのイメージを一旦壊し、『意外なオチがある奇妙なドラマ』という世間のイメージを『奇妙な世界を見せてゆくドラマ』に再構築し、あくまで意外性やどんでん返しというのは『物語ジャンルの1つ』に収束させるという事にしてゆく時期が来ているのではないでしょうか。

 

勝手にいろいろ語りましたが、スタッフが意識しているかはどうであれ、マンネリが許されない番組としては自然な成り行きではあると思います。ただ、その段階へ行くにはまだまだ時間と力量が必要になってくるでしょう。意外性を辞めれば人間ドラマの面白さで勝負する必要があるからです。

 

これはイコール、ワンアイディアだけでは勝負出来にくくなるということでもあります。これまでと違いかなり厳しくなることでしょう。そしてそこを乗り越えた時、世にも奇妙な物語はさらに魅力を増す作品として飛躍していくはずです。

 

意外性ではなく『奇妙な世界に生きる人間ドラマ』で魅せてゆく…今はそんな段階へ進む”過渡期”であるのは間違いないでしょう。吉と出るか凶と出るか、それとも私の考えがあまりにも大袈裟すぎるのかは分かりませんが、とりあえず今のところは来年の特別編を楽しみにしたいですね!

 

スタッフ&キャストの皆様お疲れ様でした。次回、春のSP(?)も楽しみにしています。