世にも奇妙な物語 ブログの特別編

「世にも奇妙な物語 ファンサイトの特別編」管理人のブログです。

'13秋の特別編 感想

前回の「春の特別編」から5ヶ月。

今年最後のお楽しみ「世にも奇妙な物語 秋の特別編」が、無事放送を終えました。

この放送を待ちわびていた他の世にもファンの皆さんは、今回の作品群は如何だったでしょうか。

 

前回はネットを見た限りでは国内・海外問わず、ここ数年で一番評判の良かった回であり、私としても2011年から続く"暗黒期なのかも…"とまで思えた所から「ちょっと盛り返したな」と思えた回でもありました。

 

そこから続く今回。期待も大きい反面、不安も当然大きく、久々に番組を見るのに緊張してしまったり……。

今回は原作付きの作品が4つと、過去の例から言って比率の高めな回。「原作を4つ用いても、ダメだったら…」という懸念も当然ありました。しかし、そこは「面白い原作を用いて、面白い物語を見せる」という所から足場を固める事にしたと前向きに解釈し、鑑賞させてもらいました。

 

それでは今回も以下、私の個人的な感想を。評価は★5つが最高となっています。

(※ネタバレ有りのためご注意ください。)

◆ 第1話 「0.03フレームの女」★★

原作は「異形コレクション10 時間怪談」に収められている小中千昭さんの同名作品。

また個人的には「心霊アプリ」「呪web」と、既にホラー担当の色が付いてきた松木創監督のホラー3作目ということ、さらに監督自身『最も怖い自信があります』とおっしゃっており、前作以上に期待してました。

ちなみに撮影時、謎の機材トラブルが起こって撮影が一時ストップしたという素晴らしいエピソードもあったそうです…(笑)

 

さて、内容としては見たら死んでしまう映像ということで、91年の「ビデオドラッグ」や92年の「見たら最期」が頭を過った方も多いのでは。今となってはベタなモチーフではありますけどね。

 

私としては導入部も良く、すんなり入り込めたので、「おっ、これはなかなか期待できそうだぞ」と思えましたが、

うーん…何なんでしょう…使い古されている物の、ストーリー的には十分怖くなる要素はあるんですが、

それでも、やっぱりというか、あんまり…怖くない…んですよねぇ…。

ラストはあれが恐怖のピークになると思うんですが、恐怖を感じないまま、ブラックアウトしてしまったので思わず「えっ、終わり!?」と声に出しちゃったんですよ…。もっと金切り声だと怖かったんですが。

 

ここ3作の松木監督のホラーを見てきて思うのは、どうも"見せ方が悪い"んじゃないかなぁと。

本作で言えば会社の人が飛び降りるシーンのように、緊迫感が無いままさらっと流れているせいか、シュールな場面になっちゃって逆に笑ってしまう事が時々あったりするんですよ。

もっと音楽や、効果音、間なり、アングルなりで怖く見せられるんじゃと惜しい気持ちが多々。

 

番組の目玉であるホラー作品なだけにキツイことを言わしてもらうと、まだまだホラーの上っ面を撫でてるだけですね……! 浄瑠璃の時代から笑いと恐怖は紙一重と言いますが、どうもまだ演出の軸がしっかり定まっていない様な気がしてます。ただ、前2作よりは確実に良くなってきてると思いましたので、オマケして★2つ。

 

落合監督に代わるホラー担当者になりつつある監督だけに、今後をかなり期待しているので、

次回4作目のホラーを担当される時は、是非「どうも監督を見くびっていた様です」と言えるような、至極の恐怖作品を期待したい所です!

◆ 第2話 「水を預かる」★★★★

原作は文学雑誌「群像」2011年4月号に掲載された淺川継太さんの同名作品。

2001年に放送され、今なお評価の声が高い怪作「BLACK ROOM」を手掛けた石井克人監督が12年ぶりに参加された作品です。制作協力は2002年の「マンホール」以来となる東北新社ということで、2008年のROBOTから5年ぶりの外部制作みたいですね。

 

正直な所、今回の5編の中ではスタッフの名前とあらすじを読んだ時から一番期待していた作品でして。

これはもう傑作の予感しかしない!」と、一人で興奮してましたが……とんでもないレベルの怪作でした。

これをゴールデンで放送してOKって所が「世にも奇妙な物語」ブランドの凄い所だと思わずにはいられません。

 

ちょっとクドい所があったものの、ツカミで一気にやられて、笑いっぱなし。スイスイの辺りで無理やりなシュールオチで誤魔化してしまうのかと身構えましたが、それすらも良しとしてしまう哀愁漂うラストは印象がかなり良かったです。全て主人公の妄想だった話は過去にもいくつか存在しますが、使い古されたネタでも料理方法次第でこうも楽しめるのかと、まだまだストーリーの可能性というのは果てしない物の様で……。「夢を買う男」に一番近いですかね。

 

「BLACK ROOM」並みにテンションの高い作品ですし、過剰な演出もあったりするので、こういうノリが嫌いな人も結構いらっしゃると思いますが、個人的には笑いあり、悲哀あり、どんでん返しありと文句無しの出来ということで、限りなく★5つに近い★4つ。

10年代の世にもでは間違いなくベストワンのインパクトだと思います。いやぁ、凄い。

◆ 第3話 「人間電子レンジ」★★

原作は現在月刊スピリッツにて連載中である竹本友二さんの短編漫画「8 はち」の中の同名作品。

番組では定番の"中年サラリーマンもの"です。

 

率直な感想は、なんだかあっという間に終わってしまったなぁ。という感じでしょうか。

奇妙なアイテム物では王道な流れなんですが、いささかオチが唐突すぎたかなぁと(^^;)

 

夫婦でレンジに入ったところで「あぁ、これで子供まで出来ちゃって、さらに凄い展開になるんだろうなぁ」と思っていたのですが、まさかそこで終わってしまうとは……! なんだかすっごく不完全燃焼な感じがします……!

 

例えばベタな話になりますが、レンジが壊れてピンチになるも、そんな物に頼らず自分の力で困難を切り抜けて自信を取り戻す…という感じになればいかにもドラマな感じですが、結局、"人間電子レンジで仕事も家庭も上手い事行っちゃいました"でエンドなので、どうも、山も谷も無いまま終わってしまった感じが強いですね。

原作は8ページの漫画ということで恐らくオリジナルも同じなのかと思われますが、20分程のドラマにするにあたってもうすこし派手に脚色しても良かった気がします。

 

題材もストーリーも王道展開ながら良い感じに進んでいただけに、着地をミスってしまったという印象。★2つ。

これまでの作品と比べて植田監督の色もあんまり出ていなかったように思いますね。

◆ 第4話 「仮婚」★★★

昨年好評を博した「相席の恋人」を手掛けた和田清人さんによる今回唯一のオリジナル作品。

ハートウォーミング風の作品で来るかと思われたものの、サイトで「ただの感動では終わる気がしない」という意見がありましたが、なるほど、そう来たわけですね~(^^;)これは読めなかった。

男が怪しい気がしてましたが、こういう方向へ落とすと。なるほど~。

 

感動物風に進んでいくため若干展開が地味な所はありましたが、主夫になりたい男性というのは、身の回りにもネット上でもよく見受けられており、そういう時代性を反映するという、interestingの方の意味でなかなか面白い作品でしたので★3つ。和田さんは感動路線だけでなく、こういう作品もいけそうですね。今後が楽しみです!

◆ 第5話 「ある日、爆弾がおちてきて」★★★★

古橋秀之さんの著書「ある日、爆弾が落ちてきて」に収められている同名のライトノベルが原作。

 

過去にライトノベルレーベルからの原作は、2002年秋の「声を聞かせて」がありましたが、こちらはあくまで純粋なホラーであったのに対し、本作はまさに「ザ・ライトノベル」と呼べる青春SF作品。こういう作品が世にもにやってくる様になったというのが良いですね~。

 

原作は未読ですが、視聴してみた所、やっぱり「ザ・青春」と言えるライトノベルらしい作風。これは中高生男子にはたまらないんじゃないですかね。たまらないでしょう。

「きっと甘いよ」とか言われたら……いや~。これは中高生男子にゃたまらないでしょう!(3回目)。

 

放送前はネット上で、実写化を不安視する声も散見されましたが、基本的には丁寧な作りだったように思います。

原作を読まれている方は、実写化なのでどうしてもキャスティングや演出の不満があるでしょうが、原作未読の立場から見るとそこまで酷い感じにはなっていない様な気がしました。

CGはいつものクオリティでしたが、画面から漂う甘酸っぱさの前ではあんまり気にならなかったです。

 

でもまぁ、アニメ化の方が良かった人の方が多いんだろうなぁと言うのは薄々感じますね。

放送前から「ライトノベル」原作と知っていたお陰で、世界観をすんなり受け入れられましたが、

予備知識の無いまま見てしまってた場合だと、受け付けるのに時間がかかったかもしれません。

 

ですが、いかにもアニメ的な原作をあえて「世にも奇妙な物語」で映像化するという試みは、一応成功していたように思えます。巷には残念な実写化が結構ありますからね。奇妙な世界がまた少し広がりました。

本作はテラーパート含めて約27分と長尺の作品ということで、スタッフ側も力を入れていたみたいですね。

 

とにもかくにも、世にも奇妙な物語至上No.1の青春作品であることは間違い無いなと。

ツッコミ所は無きにしも非ずですが、作りの丁寧さと試みの新しさで★4つ。

 

ベタだろうが、アニメ色が強かろうが、台詞回しが臭かろうが、そんなことは関係ないのです。男という生き物はこういう話が大好きなのですから……!

◆ 総評 ★★★+0.5

さて、総評ですが、正直な感想を挙げると、見た後の感じは前回以上に良かったです。

私は全体の調和が取れている所も重要視する質なので、そういう意味ではここ4~5年では一番かなと。

極端に酷い作品も無く、期待外れの作品もあまりなかったですし。唐突すぎて驚いた部分はあっても、ガッカリは一度もしなかったですからね。だてに原作4つを揃えているだけはあったなあと、安心しました。

原作4つで、全然ダメだったらもう絶望的でしたからね……(- -;)

 

良くも悪くも濃い作品が多いので、恐らくファンの間でも評価が極端に分かれる回であるとは思いますが、

危機感を抱き続けてきたここ数年から「なんだ、まだまだいけるじゃないか!」と思えた春SPから半年。

そこから上手いこと上昇気流に乗れている気がしたので、さらなる今後の飛躍を期待して、前回の総評にプラス0.5して★3つ半。今のスタッフでも原作を面白く作ることが出来るとわかったので、次の課題としては是非オリジナル中心の面白い回を期待したい所ですね!

 

ただ、そのためにネックになっているのは、やっぱり恐怖・ブラック系作品になるんでしょうね。

落合監督無き後のここ10年くらいのホラーは鬼門ジャンルになってしまってますし。

コメディ路線ばかりウケて、肝心カナメの部分がどうも疎かになっている危機感は多少あります。

 

で、最近常々思うのは、どうも近頃は一般的なホラーというイメージに囚われちゃっているんじゃないかなと。

どうも近年、呪いや幽霊といったテーマが中心になっていて。勿論、過去にそういったテーマを扱う作品は結構ありますし、名作も多いんですが、「『世にも』のホラーってそれだけじゃなかったはず」という気持ちもあったりするんです。

 

「懲役30日」や「23分間の奇跡」等、見た後にじんわりと残る様な、自分の中に"ソレ"がこびりついてしまった嫌悪感でいっぱいになるような、そういう『世にも』の人気の一端を支えてきたタイプの作品群にも是非挑戦してもらいたいなと思っていたりします。それこそ「トリハダ」シリーズタイプの物を。

 

私も好きなシリーズですが、それでも「トリハダの方が面白い」と言われるのはやっぱりマニアとしても少し悔しいんですよね…(- -;)。一番、理想的なのは「悪いこと」みたいなドス黒い感じの作品ですが、それはちょっとジャンルが違ういますかね…。

 

安易に「ホラーはこういう物だ」という枠にとどまらず、それこそ、現代の恐怖を考え続けて、普通のホラーとは一風違う作品を生み出していった落合監督を越える、従来のホラーの枠を打ち破る作品を期待したい所です。

恐怖は外からやってくるのではなく、内からやってくる物ですからね。

本当の意味で「世にも」が復活するのはホラージャンルを軌道に乗せた時だと思っています。

 

これから放送30周年にむけて、本来の番組の良さを意識した回帰路線に加え、この10年代はさらにそれを踏まえた上で、従来に無かった新たな奇妙を生み出していくという、第3シリーズのキャッチコピーからもじりましたその名も回奇路線を、10年代の奇妙には歩んでいただきたいなと思います!

 

……上手い事言えてるか若干心配ですが、これからも面白い物語を追い求める姿勢を保って、新たなファンの方々が増えてくれれば、一介の世にも馬鹿としては嬉しいことこの上ありませんからね。まだまだ奇妙な世界を押し広げていきましょうよ!

 

……という訳で、以上私の個人的な感想でした。

後から見直して演出の意図に気づいたりすることもありますが、ひとまずは初見での意見ということで。本当に、久々に良かったんですよ。番組ロゴが乱発された辺りなんて、ため息ばっかりでしたから!(T_T) 久々に安心して眠る事ができます。よかった。本当によかった。もう失望に慣れたくはないですからね。

 

さて、今回の秋SP、他の世にもファンの皆様は今回お気に入りの作品はありましたでしょうか。それとも、ガッカリな結果に終わりましたでしょうか…? 面白いと思えた作品があれば、是非、公式サイトや本回に携わった原作者さんやスタッフさんのブログなりtwitterなりでその声を届けていただきたいと思います。

 

なにはともあれ、スタッフ、キャスト、その他関係者の皆様お疲れ様でした&ありがとうございました。今回もしっかりと、5つの奇妙な物語を存分に楽しませていただきました。暦の上ではオクトーバーでも、やっぱりこの時期は奇妙な世界を覗かないと秋が来た気がしませんからね!

 

今年の放送は恐らくこれで終了。次の春の特別編までまたしばらく奇妙ファンには寂しい日々が続きますが、今の所は余韻を楽しみつつ、今月25日に発売される「'13 春の特別編」のDVDの発売を待ちたいと思います。

 

あ~……ほんとに良かった(笑)