世にも奇妙な物語 ブログの特別編

「世にも奇妙な物語 ファンサイトの特別編」管理人のブログです。

ほんとは面白いゼロ年代奇妙 後編

多くのファンから質が低下してきたと言われることの多いゼロ年代は、落合正幸星護、中村基樹、鈴木勝秀などなど、番組初期~90年代の特番シリーズを牽引してきたメインスタッフ達が徐々に番組から離れだし、若手中心へと移りだした境目の時期であります。近年でも高山直也、鈴木雅之落合正幸といった方々が参加されることがありますが、あくまで数年に一度のゲスト枠。

 

そのため、この時期はかつての中心であった黄金メンバーと、後に番組の中心となっていく若手メンバーによる唯一の競作期とも呼べる訳で、大きな転換期であったことは言うまでもありません。当時は全く気が付きませんでしたけどね(^^;)

 

そんな「世にも」のゼロ年代の中で、ワタクシ白虎がオススメしたい10作品を紹介する「ほんとは面白いゼロ年代奇妙」。今回は後編ということで、初期スタッフがほぼ離脱した状態となったゼロ年代後半の物を中心にご紹介していきたいと思います。

◆ 影の国 (2003年 春の特別編) オススメ度 ★★★★ 

番組初期から、数々の名作を生み出してきた落合正幸監督だからこそ採用されたという感じの奇妙な一本。今の若手作家等がこういうストーリーを持ってきても、すんなり通るかどうか難しいかもしれないですね。

 

関連書籍等では“ホラーの名手”と呼ばれている落合監督ですが、世間一般のイメージするホラーとはちょっと違う所、ドラマらしくない違和感が非常に魅力だなと私は想っていて、例えば、恐怖作として名高い「急患」や「おばあちゃん」のようなタイプの作品も、意外とドラマで見れないというか、やる人がいないというか。

 

そんな監督は2000年のインタビューにて「視聴者に"そういうストーリーか"と思わせた所で、最後に違う所へ飛ばしたい。説明のつかない事に恐怖を感じてもらいたい」という趣旨の発言をされており、何だかわからないけれども怖い。不可解なものに対する本能的な恐怖という物をメインに考えていった時期だったらしく、その辺りに制作された作品を見ると「私は、女優」「雪山」「心臓の想い出」など、その考えが色濃く反映されているのがありありと伺えます。私はその集大成が、この「影の国」なんじゃないかなと。

 

幽霊や怪物がでるわけでもなく、狂人が出てくる訳でもなく、ただ男は別世界…影の国への存在を訴える……。9割型、日の差す真っ白な病室だけのシーンなのに、どうしてここまで怖いんでしょう。どんな視覚も、想像力の前では形無しなのでしょうか。

そして、あのラスト。投げっぱなしという人もいるでしょうが、確実に「別世界へのトリップ」を狙っているのは間違いありません。当時見ていた私も、ちょっと呆然としながら、若干の不可解さと、何だかわからない畏怖が胸の中を徐々に侵食して……。この違和感がクセになると、あなたも気づけば「世にも」好き。

 

世にもの恐怖ジャンルを象徴する落合ホラーの真髄を見ない手はありません。ぜひ皆さんも“想像力”を連れて影の国へ──。

ネカマな男 (2005年 秋の特別編) オススメ度 ★★★★

タイトルが発表された当初、真っ先に思ったのは「ネカマって何?」でした。

なんでも“ネットオカマ”の略語らしく、ネットで女性の振りをする男性のことだそう。

いわゆる本物のオカマという訳ではなく、女性として振る舞う事の利点を享受したいケースが多いようで、オンラインゲームでは周りがチヤホヤしてくれレアなアイテムを譲ってもらえたり、SNSでは多数の女性と交流しやすくなる等を目的に手を出すみたいです。聞いた話では、検索で引っかかる様にオトリ用の偽ブログを運営し、信憑性を増させるプロネカマさんもいるとか……。

 

そんな変わったテーマを扱う作品だったため、当時「一番期待できなさそう…」というのが正直な印象でした。ヘンテコなコメディかな、なんて。……が、蓋を開けてみれば、5作の中で一番の良作だったという超大穴作品だったので、これだから「世にも」は辞められないなと思わされたりしたのが昨日の事の様です。

 

私としては、とんでもない事をやらかしてしまったが、既に時遅しという切ないブラック物……という解釈なのですが、ネットやBBS等を見ると、一方では感動物という受け取り方をされている様で。しかし、どっちに解釈しても傑作なのが素晴らしい!

 

ちょっとしたコメディから入り、不気味な様相を呈し、ラストにドーンとカマしてくれる短編ドラマのお手本の様な作品です。泣いても良し、トリハダを立てても、哀しさに胸を痛めても良し。見ても損する事はきっと無いことでしょう。

◆ 昨日公園 (2006年 秋の特別編) オススメ度 ★★★★

ネット上では近年の名作としてよく名前のあがる一本で、ストーリーの出来も去ることながら、演出もラストもツボを抑えた良作。

 

原作が収録されている「都市伝説セピア」が中国で出版された際に「大人気ドラマ『世にも奇妙な物語』の昨日公園を収録!」と帯に書かれていたくらいですから、海外ファンの間でも知名度の高い作品であることは間違いないようです。……これを知った時は、そこまで「世にも」の知名度があるのかと衝撃だったり。

 

演出は「トリハダ」シリーズに始まり「ドクロゲキ」「ホラーアクシデンタル」等、今やCXホラーのメインディレクターとなっている三木康一郎監督。

 

元々バラエティ出身のディレクターさんだそうで、あの「ウッチャンナンチャン炎のチャレンジャー」の人気コーナーだったイライラ棒を考案された方なんだとか。

 

ドラマ演出は、ホラーファンの間では語り草となっているドラマ「なっちゃん家」(1998)などがありましたが、フジテレビのドラマでは、2005年4月の深夜に放送されたサスペンスホラー「CAPSULE」が最初。フジ2作目の演出作品となる「昨日公園」から半年後には「トリハダ1」の放送がスタートされることとなり、現在のCXホラーシリーズが誕生する大きなキッカケとなった意味でも外せない作品です。

 

転がったボールを拾った事からタイムスリップするという、ちょっとだけ日常を踏み外した導入部も最高ですし、友人の死を阻止するためにそれを繰り返した先の決断が何とも切ない。その先のラストですが、映像化にあたり、ラストの親子を恋人に改変し少々ブラックテイストに味付けしているので、原作と比べて受ける印象が180度変わっています。そのため、原作派と映像版派で好みが分かれているみたいですが、私は映像版のゾクッとくる感じも、原作版の泣ける感じも大好きで。嗚呼……。

 

既にご覧になった方も、まだご覧になったことがない方も、まずは映像版を楽しみ、次いで原作へ入る事をオススメします。ほぼ同じストーリーでありながら、2度楽しめるという贅沢な鑑賞が出来る作品をみすみす逃す手はありません!

◆ 行列のできる刑事 (2008年 秋の特別編) オススメ度 ★★★★

ゼロ年代後半最もインパクトのあった作品を挙げるならば、迷わず本作を選びます。

コメディ作品はその人の好みが分かれやすいですし、硬派なファンからすると認められないタイプの作品かもしれませんが、私としては「世にも」の醍醐味はやっぱりこれだなと思わせてくれた一本だと思ってます。

 

星護監督の言葉に「若い頃はテレビドラマなんて絶対撮りたくないと思っていたが、『奇妙』なら撮ってもいいと思えた」という物があるんですが、資金が豊富にあり、放送コードの緩かったバブル期のテレビ界であっても、やりたいイメージをそのまま映像作品として作れる環境というのが、いかに無かったかという事がわかります。番組を続けていく中で、ある程度妥協しなければならない点も出てきたとは思いますが、世にもの魅力の一つとしてこの“自由度の高さ”というのは確実に存在していました。

 

しかし、ゼロ年代に入ると放送コードも厳しくなり、ネタ切れや人材不足などの問題からその自由度の高さを完全に活かしにくい所が出てきた側面もあったように思います。

 

そういった中での「行列のできる刑事」の登場は、「世にも」特有の懐の広さはゼロ年代であっても不変である事を証明してくれた作品であったんじゃないかなと。勿論、本作には原作となる自主制作映画が既にあった訳ですが、それをプライムタイムの放送として、お金をかけて映像化できるなんて凄い事ですよ本当に。

 

単純に面白いだけでなく、番組の自由度を大いに活用し、これまでになかった所を突いたチャレンジ精神と、番組の理想とする形を実現してみせた一本。物凄い大袈裟な褒め言葉になってるのは自分でも薄々気づいていますが、素直に私はこういう作品がゼロ年代でも作る事ができる事が非常に嬉しかったんですよね。“全然「世にも」らしくないのに、「世にも」らしさたっぷり”と、一見矛盾しているようですが、実際に見ていただければお判りになるかと思います。

 

長々と面倒くさい事を語ってきましたが、シュールコメディが好きな方にはピッタリな作品ではないかなと!視聴してみてこういうノリが嫌いだと思った方は、早送りして犯人をパトカーで護送するシーンだけでもぜひ見てください(笑)

◆ 真夜中の殺人者 (2009年 春の特別編) オススメ度 ★★★★★

ゼロ年代後半で一番の傑作といえば、個人的な思い入れの強さも含めてずばりこれしかありません。

 

もともとの原作は、第2シリーズの放送中であった1991年に発売された「世にも」のノベライズシリーズに収められている書き下ろし小説。個人的にこのシリーズのオリジナル小説はどうも物足りない物が多くて、印象に残っているものは僅かしかないのですが、この原作を読んだ時は「なんでこんな傑作を映像化しないんだ!?」と、その興奮が収まらなかったんですよね。それくらい当時の自分には衝撃で。

 

私がファンサイトを立ち上げた当初から数年に渡って、原作本の紹介文に「是非映像化してほしい!」と書いていたほどのお気に入りでしたが、さすがにバンバン人を殺しまくる描写は今のテレビでは難しいだろうなぁ…と思って諦めていた最中の映像化。感激でしたねぇ~。当時オチが読めたという方もチラホラいるようでしたが、比較的好評だった様で、サイトでも推してきた私としても間違ってなかったなと!

 

未見の方には出来る限り前情報無しで見ていただきたいので、何はともあれ見てください!

 


 

というわけで、以上「ほんとは面白いゼロ年代奇妙 後編」でした。

当時は「イマイチだなぁ…」だと思ったりもしたこの時期も、今こうして振り返ってみれば意外と佳作が多かったんだなと思わさますね。

 

現在、2010年代も間もなく半ばに差し掛かろうとしていますが、私としては全体的に元気が無いという今のイメージをこれから払拭してくれること、そして、そんな時期がいずれ、より良い番組になるためのターニングポイントとなることを期待したいと思います。

 

さて次回は、2年前に行ったまますっかり放置していた世にも奇妙な物語 カルトクイズ」の回答編と、先日、某日本人俳優の事務所より初めて国内で公式に発表された中国リメイク版の続報をまとめる予定です。

 

最近、中国版の件でブログとサイトのアクセスが国内外問わず増加しており、情報を求められている方も多いようなので出来るだけ早めに、6月上旬頃に更新できれば……できれば、いいなぁ、とは、思っています(^^;)お楽しみに。