世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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'21秋の特別編 感想

『'21秋の特別編』が今年も無事放送を終えました!

 

前回『'21夏の特別編』は、YouTuberや声優のゲスト出演などの派手な話題が印象深かったですが、今回はその辺りを比較的抑え、飛び道具的なエピソードも見当たらない割と堅めの布陣。さらに、ほぼ新顔による全編オリジナル脚本なのも手伝って、より”ストーリーで勝負”といった装いとなりました。

 

それを受けて、「やっぱり「世にも」はそうでなくちゃな~!」と興奮する自分がいる一方、「お前はそれに何度裏切られたと思っているんだ?」と囁くもうひとりの自分が存在するのも事実……。

 

そう、どんなに言葉を尽くそうとした所で、結局世にも妙な物語」は面白いか否かが全て。この残酷なまでの真実に堂々と立ち向かっていく、番組スタッフの皆さんの存在に目頭が熱くなる瞬間は数あれど、所詮そんな物はエンターテイメントという名前の前では些末な要素でしかないのです。……そんなわけで、今回はいつも以上に『思う存分楽しみたい!』という素直な気持ちを持って、じっくりと拝見させてもらいました。

 

では以下、感想です。(評価は★5つが最高となっています)

◆ スキップ ★★

世にもフリークの間では、「雪山」の落合正幸監督に次ぐ2代目ホラー担当として知られるようになった松木創監督の最新作。過去作の「墓友」「サプライズ」「夢みる機械」辺りを挙げれば「あぁ!」となる方もいるのでは。

 

そんな松木監督。放送前のSNSで、本作について『自信作』『過去最大級の怖さ』と、会心の出来であるらしいことをたびたびツイートされていました。監督のSNSを追っている身からすれば、実はこれ結構珍しいこと。そうなれば期待する以外無い!と、わくわくしながら視聴してみましたが…。

 

 

うーむ……まったく好みに合わないのが、こんなにツラいとは……。

 

 

ストーリー自体の面白さは頭では理解できるんですが、それでも気になる箇所が幾つかあった所に、私が以前から苦手な監督特有の色が混ざり合っていくという、ちょっとしんどい視聴時間に。特に終盤の兄が迫ってくるシーンは、さすがにやりすぎ

 

従来のホラー番組とは異なる、無機質かつドライな作風の落合作品を「世にも」ホラーの王道とする人間としては、往年のホラー映画マニアでもある松木監督が好む"王道的湿度"は、なかなか受け入れ難い部分がどうしても。この持ち味が「ほん怖」だと、十分に発揮されるんだろうなとは思うんですが……。

 

とはいえ、松木作品には「墓友」「夢みる機械」など、世にもの世界観にマッチした佳作もしっかり存在しています。個人的に当たり外れが大きい方ではあるものの、2代目ホラー担当という称号は紛れもなく本物。今後はよりいっそう、私のような面倒くさいマニアを唸らせる傑作ホラーの到来を期待したいですね。その期待を込め、星ひとつオマケして★2つで。

 

あ、これはしばらくして気付いたのですが……終盤に出てきた主人公の娘を演じていたの、松木監督のご息女じゃないですか!(笑)監督のInstagramで頻繁に写真をあげられていることもあり、「この子役、どこかで…?」とずっとモヤモヤしていたんですよね。溺愛する娘を自信作に起用してしまう、良い意味での親バカっぷりに、ほっこりさせられちゃいました…(^^;)。

◆ 優等生 ★★★★

今回一番の長編作品。昨年の個人的ヒット『燃えない親父』を担当した坂本絵美さんによる脚本ということでしたが……やっぱりシナリオが上手い!ここ数年の新人作家さんの中では一番腕のある方じゃないでしょうかね。何でもなさそうなシーンが後半に活きてくる、さりげない伏線の張り方なんて、大変私好み!

 

これまで長編作品はダレることが多い印象でしたが、本作も多少長さは感じるものの、コメディ→ハートウォーミング→ブラックと二転三転しつつも、自然な繋ぎ方かつツボを抑えた見せ場を各所に用意してある構成で、最後まで飽きさせない贅沢さがとにかく楽しかったですね。ラストは思わず「そう落とすかー!」と声に出しちゃいましたよ(^^;)。

 

ほか、山内監督のポップな演出も世界観にマッチしていて好感触。SNSではその辺で賛否あったようですが、『県内一のおバカ高校に通う、クラスで一番おバカな主人公』というコミカル風な設定を初っ端から提示していたため、個人的には十分納得できるかなと。まあ、世にもには「ママ新発売!」という大先輩が君臨していますから、これくらいじゃ全然全然…(笑)。

 

私としては今年一番の良作だったということで、★5つ……と言いたい所ですが、もっとコンパクトにすればさらにスッキリして面白かっただろうになと。腕のある作家さんでも長さは隠しきれないんですからねぇ。そんなプロデューサーの采配の悪さに減点して★4つ。坂本さんの新作、来年以降も期待したいです!

ふっかつのじゅもん ★★

今年35周年を迎えた大人気ゲーム『ドラゴンクエスト』と公式コラボした一編。まさかのコラボということもあり、ゲームファンからの注目度も高かった模様。

 

内容としては、事前情報から察せられる通り、ノスタルジックなギミックを使った王道的ハートウォーミング物といった佇まい。「世にも」でこの種のストーリーはまず変なことにはならないので安心しつつ視聴していましたが……。

 

あのラストで、「えぇ…???」となってしまった自分が。

 

『感動作と見せかけてのブラックオチ』×『懐かしのドラクエあるある』という、ファンサービスも兼ねた不自然ではない組み合わせではありますが……個人的には、かなりの”取ってつけた感”を覚えてしまいました。

 

ひとつ前の「優等生」も急転直下系のオチではありましたが、あちらは"書いた答えが現実になる"ルールにきちんと則っていた一方、本作では『Ⅱの復活の呪文で死んだ友人が復活』という前提で進んでいたわけですよね。そこで最後に『Ⅲではセーブデータが消えると記憶(歴史?)が消えます』と突然言われても、後出し感は拭えないかなと。

 

「記憶リセット」「影の国」など、過去にあった急転直下ブラック作はどれも一応、作中にルールや伏線が一応提示されていたわけですしね(不条理ものは別として)。例えばこれが「ドラクエと過ごしたあの頃の時間がソフトに染み付いている」的な振り方をしていたらまだ納得できたと思うんですが…細かいですかね。

 

そして、そこは"お約束"ということで百歩譲ったとしてもですよ。

「あなた、誰?」「きみは誰?」は、本っっっっっっ当に、蛇足極まりないでしょう!!!

 

昨今「死んでる…」とか「つまり俺も…」とか、ラストに無粋な説明台詞をわざと付け足すやり口、どうにかならないんですかね。一昔前なら、例のBGMが流れた後、無人の部屋になっているとか、妻だけ消えている主人公の後ろ姿とか、スパッとどんでん返しして、ブラックな余韻を持たせるやり方はいくらでもあるじゃないですか。それをまあ長々ダラダラと…(- -;)

 

ひょっとして、今はそういう台詞がないと何も意味がわからない人が大多数なんでしょうか。いや、そうだとしても台詞にする以外の説明の仕方ってあるわけですし、過去作にはきちんとそれが出来てる物もいっぱいあるじゃないですか。「今の番組にも良い所はあるよ!」と主張したい側の人間から見ても、こういう姿勢自体は昔と比べて明らかにダメになってきていると思いますね…どうにかならないものか。

 

その辺を差し引いて★2つ。やはり、トリッキーな「優等生」の後は、ストレートに進めてよかったのでは?

◆ 金の卵 ★

ブラック色を前面に押し出した、ファンにも好まれやすそうな雰囲気の一編。私も今回のダークホース候補として期待していたのですが……まさか脳内から"いの一番"に除外したベタベタな展開とオチをそのまま綺麗になぞられるとは思わなかったんですよ……

視聴後も「なんで今更こんな手垢にまみれた話を…?」と、ただただ疑問符が浮かぶばかり。雰囲気自体は好みのタイプだったんですけどねぇ…。

 

そして「また普通の尺っぽく見せかけたショート枠か…」と、ガックリきてしまったのも本音。この最後の最後にオマケみたいな短編を固定枠として作り続けている流れ、一体何なんでしょうね?  評価ポイントとして挙げられるのは、レギュラー期同様のテンポの良さだけということで★1つ。

◆ 総評 ★★★

なんだか評価が厳しめになってしまいましたが、視聴後の感じとしては意外と好感触。「優等生」が楽しめたのも大きかったでしょうが、久々のオールブラックオチという攻めた回であったことも一因かもしれません。(ネットを見るとそこが賛否両論あるようですが、まあそれは毎度の事なので(^^;))

 

一方で、「ふっかつのじゅもん」に代表されるように、『全部ブラックで行くからオチもそうしよう』という、やや"無理のある"作り方になっている印象も強く感じました。『'01春』みたく、もう少し異なるパターンのブラックさを取り揃えてほしかったですね。

 

また、最近特に不満に思っているのが『余韻を感じさせてくれない』こと。

OPEDの短縮はもちろんのこと、これまで各話終了後にCMを挟んでいたのから、ストーリーテラーで繋いでそのままシームレスに次の話へ移行する方法に変更したため、忙しなさをどうしても覚えてしまいます。(ネット配信ではCM関係無いですが、結局ストーリーテラー2話分を1本にドッキングしているため、印象もあまり変わらず…)

 

ほか、本編でもラストに蛇足としか思えない説明台詞を言わせたり、わざわざ過剰な説明をダラダラ付ける作品も目立ち、"制作側の保険"という名の安易な態度が見えすぎているのが本当に残念極まりないです。

 

そりゃまあ、視聴率は大事です。予算の関係もあるでしょうし、フジテレビもまだまだ完全復活といえる状況でもないですよ。ネット配信全盛の今、『良い物を作れば自然と好視聴率が取れる』と無邪気に言える時代でもないでしょう。番組の歴史を次に繋げるためにも、試行錯誤すること自体は否定しないですよ。でも、そんな小手先なやり方で安心していることが、本当に今後番組のためになるのかな?とも思ったりするわけです。

 

昨今「金曜ロードショー」等で、EDカットが騒がれることがありますが、それが不満ならばDVDなりCS放送なりの完全版を見れば済む訳です。それが世にもの場合、10秒程度のOP、過剰な説明、テラーパートの下に素早く流れるクレジットのED……それが完全版として10年後も50年後も残っていく訳です。そして、それが当たり前になっていく訳ですよ。果たしてそれは本当に良いことなのか…。

 

とはいえ。とはいえです。昨今、全スタッフを静止画で一気に出していた流れから、今回はテラーパート中とはいえ、長尺でEDテーマを流しつつ、クレジットを最後まで流すなど『出来るだけ改善しよう』というスタッフの意思を僅かに感じたのが、ちょっぴり救いになりました。

 

そして、公式ツイートにて、数年ぶりにこんな"決意表明"があったことも、実に頼もしく、また大変"ガチエモ"でございました。

 

 

この言葉を信じて、今後も称賛と不満と独断と偏見を交えつつ、奇妙な世界を追い求めていきたいですね。奇妙スタッフたちが紡ぐ新たな冒険譚、まだまだ期待していますよ!

 

スタッフ、キャストの皆さん。今回も本当にありがとうございました!

来年は『奇妙漫画賞』の大賞作品の映像化が既に決定されているため、早くもドキドキワクワク。果たしてどんな作品が大賞に輝くのか、後々の発表の方にも注目したいですね。