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'22秋の特別編 感想

今年最後の回となる『'22秋の特別編』が無事に放送を終えました。

 

前回は「何だかんだ銀座」「メロディに乗せて」などインパクト大の作品が勢揃いし、SNS上でも大きな話題となりましたが、その流れを受けた今回、番組スタッフは一体どのような仕掛けに打って出てくるのか、ドキドキしながら視聴致しました。

 

それでは以下、各話の感想をいつものようにダラダラと参ります。(評価は★5つが最高となっています)

◆ 元カレと三角関係 ★★★

原作は2019年にTwitter上にて発表され、当時大きな話題となったQuquさんによるWeb漫画。2020年には、本作を含む作品群をまとめた短編集『死んだ彼氏の脳味噌の話』として書籍化もされています。

 

 

さて、そんな第1話目はド直球の感動作。見る前は"泣けた"という評判が散見されたため「無理に泣かせに来る様な作品は好みじゃないからなぁ…」と不安な気持ちもありましたが、いざ見終わると結構グッと来ている自分が。

 

冷静になってみると、かなり自分勝手な彼氏ではあるんですが(笑)、上手くその辺を誤魔化してくれているジャイアン声のロボットの愛らしさはもちろんのこと、原作の良さを最大限に膨らませようとしている脚本・演出の仕事ぶりが垣間見えたのが印象的でした。

 

 

例を挙げるなら、ロボットのジュンが主人公の家にやって来た理由。

原作のジュンは、自分の都合を優先する自己中心的な素振りが強く見られ、主人公の元にも『別れてからも主人公のことが忘れられず、死ぬまでの時間を一緒に過ごしたくなった』と押しかけてきます。こういう所が別れた原因なんだろうなと察するものの、「よくこんな男のワガママを聞く気になるよなぁ…」という思いも浮かんで、物語にちょっと入り込みにくかったんですよね

 

一方の映像版では『大怪我によって動けない中、喧嘩別れしたまま死ねないと、治るまでの期間を主人公と過ごしたくなった』という、本当の事を隠しつつ、主人公の心情に配慮するアレンジに変更。ジュンの優しさや、主人公への想いを感じさせるセリフに改変することで、受ける印象も全く違っています。「ああ、こういう男ならワガママ聞いてやれるのかもな」と一応納得でき、この絶妙なさじ加減が上手いですよね~。

 

 

演出面でもお馴染み共同テレビの面々ではなく、久々にフジからディレクターを招いたこともあってか、いつもの感動モノとはちょっと違う仕上がりに。見せ場である湘南以降のシーンも、悔しながらちょっとウルッと来そうになっちゃいました。

 

そんな泣かせどころをしっかり押さえているのも良いですが、個人的には中盤、窓から漏れる光が十字架の形になっている隠喩に気づいた時はシビレました。マニアはみんなメタファー大好きですからね(?)。

 

逆にツッコミどころとしては、「いくら何でも未練タラタラすぎないか?」「主人公には新しい彼氏がいるのに、自分たちの結婚式の真似事をしたがるのはどうなのか?」「この元カレやけに発声が良すぎないか?」など、いくらでも挙げられるんですが、ここまでまっすぐなお話を見せられると、何を言っても無粋だな……という気も。う~ん、ズルい!

 

 

そんなズルさが悔しくもあり、時間配分もちょっと長いように思えたため、そこを差し引いて評価は★4つ寄りの3つで。もし私が脚本家だったら「死ぬ前のジュンが、主人公とアキラの結婚式のために奔走し、無事見届ける」くらいに大胆な脚色をしたくなっちゃいそうですが、原作の良さをより活かす事を優先したスタッフの判断がやっぱり正解なのでしょうね。良いお話でした!

 

なお、放送後から作者ご本人が描き下ろしたスピンオフ漫画『リスクマッチ』Twitterにて絶賛公開中です。原作では描かれなかったエピソードが読めるのはここだけ。本作の余韻が未だ忘れられない方、ぜひご覧ください。

コンシェルジュ ★★★

これまで「0.03フレームの女」「墓友」「サプライズ」「夢男」「スキップ」などを手掛け、フリークの間では10年代以降の2代目ホラー担当として知られる松木創監督の最新作。

 

 

松木作品はその個性の強さ故、個人的に当たり外れがデカい印象があるため、放送前には期待と不安が五分五分といった感じでしたが、本作は……当たりでした!

 

いや~普通の心霊や怪異ものより、奇妙な恐怖が題材になった時の松木監督は実にハマりますね。久しぶりに「そうそう、監督のこういう話を見たかったんだよ!」という気になれました。

 

ストーリーは基本的には世にもでの王道である怪しい人物がエスカレートして…の展開。そんな中、不気味な色をまぶしたコミカルシーンや、棺桶関連のちょっとシュールな(お馴染みの?)シーンも良いスパイスになっており、松木監督の手掛ける唯一無二の世界観を存分に堪能させてもらえたのではないかなと。

 

脚本にはなかったと言うゴヤの絵も要所要所でテーマを浮かび上がらせていて◎。全ては悪魔が手伝っただけなのか、それとも手の平の上だったのか……色々考察できる余白を大胆に作っているのも、(意図的なものであれば)近年の「わかりやすさ重視」に対抗しているようで、好感が持てます。

 

というわけで、評価は★4つにしたい所ですが、一方でゾクッと来るポイントがもう少し欲しかったな…という思いも。世にものホラーやブラックモノのレベルはまだまだこんなもんじゃないはず…という今後の期待を込め、評価は★3つ。これからの松木監督にますます注目ですね。

 

あと、本作を見て思ったんですが、監督にはシュールコメディ作品も意外と合うんじゃないかなと。いざやってみたら、ネットを騒がせる超怪作が出来上がるような気がするんですが……コンシェルジュの大神さん、どうかよろしくお願いします。

◆ わが様 ★★★

ドラマファンの間では「古畑任三郎」などの三谷幸喜作品の演出で知られ、世にもでも「23分間の奇跡」「和服の少女」「ボランティア降臨」など、初期から携わる大ベテラン河野圭太監督による、ハートウォーミングな1編。

 

 

世にもでの『中年男性』×『感動モノ』はテッパン中のテッパンであり、本作も例に漏れずしっかりヒットを出せたのでは。日常に近い奇妙にぴったりな題材、主人公の変化の振り幅、わが様が欲しがっていたもの、全ての要素が綺麗にまとまっていて、今回の中では最もクオリティの高い作品だったと思います。

 

ただ、「コンシェルジュ」を挟んでいるとはいえ、ハートウォーミング物が2度目となると若干食傷気味になってしまったのも事実。特別編って、放送順やジャンルのバランス配分もかなり重要な要素ですからね。

 

また、あまりに卒が無さすぎて、全体から見るとやや地味な印象もあったかなと。そういうわけで評価は★3つ。やっぱりハートウォーミング物は回に1本くらいがちょうどいいよな…という思いを新たにしました。

 

……あ、そうそう。中盤の「オトドケモノです」連呼って、あれ絶対狙ってますよね?(笑)

◆ ちょっと待った! ★

2002年の「声を聞かせて」から20年連続で番組の演出を務め、今作で史上3人目となる30作目の大台に乗った、メインディレクター植田泰史監督のコメディ作。

 

そんな記念すべき作品であるということや、私の好きな藤子F先生の「自分会議」のようなテーマが扱われているということもあり、期待作のひとつでもあったんですが……率直に言うと全く好みに合わない作品でございました…(-_-;)

 

アイディアそのものは面白いんですが、蓋を開ければ類型的な登場人物が入れ代わり立ち代わりワチャワチャとベタな喧嘩をするだけで、セリフや展開の面白さといったものが特に感じられず。視聴中も「画面の中だけはドタバタコメディの雰囲気になってるけど…」と、若干置いてけぼりにされてる気持ちに。途中「これまだ終わらないのかな…」と無意識に時計を見てしまったのに後から気づき、自分自身ちょっとショックでした(T_T)

 

そして今回も4話目はお手軽な短編として割り当てられているせいか、脚本の作り込みも他の3話と比べてかなり甘めな印象。ラストは「何で他の客は気にしてないんだ?」という疑問を打ち消すための捻りが若干効いていたものの、何だか綺麗に収めようとしすぎな着地となり、う~む……。

 

 

というわけで、とことんツボから外れていることもあり本作の評価は★1つ。お手軽な作風だったせいか、「世にも」らしさをあまり感じられなかったほか、植田監督の良さもほとんど出てなかったような…。次回作に期待です。

 

 

しかしホント、ここ数年の3.5話構成みたいな配分、一体何のためにやってるんでしょうね。ひょっとしたら、視聴率的な利点から割り出された事なのかもしれませんが、不必要な縛りや序列が発生してしまうため、それぞれのディレクターが自分の作品で勝負するというこれまでの図式が崩れてしまう訳で、番組の良さを大きく毀損することにしかなってないような気がするんですが…。何とか各話平等に扱って欲しいもの。

 

最後に。しいて良かったこと挙げれば、世にもを見たことがない若いジャニーズファンの方々が、番組に触れる良いキッカケになったこと。意外とこういうことがキッカケで「番組のファンになりました!」という方、国内外に結構多いんですよね。今回ここから1%でも奇妙な世界の虜になる方が出てくだされば、昔からのファンとして言う事無しです!

◆ 総評 ★★★

「'19雨」以来3年ぶりにハートウォーミング物を中心とした今回。取ってつけたようなどんでん返しや、派手な飛び道具の無い素直な作りの物語が揃っているためか、3年前と比べて視聴後の印象はだいぶ良いものでした。

 

一方で全体的に綺麗にまとまりすぎて、どこか小粒になってしまったような気も。ちゃんと見れば悪くないけれど、後々の記憶にはあまり残らない……そんな地味なタイプの回だったと言えるかもしれません。

 

こうなった理由は、前回の夏があまりにぶっ飛んだ作品ばかりだったせいで、続く秋でそのバランスを取ろうとしたのかもですが、やっぱりあれですね……

 

すっっっっっごく物足りないですね!!!(笑)

 

放送前にこうなるであろう空気は感じていたため、十分そこを理解した上で視聴していたものの、いざ見終わってみるとあまりに胸の中がこざっぱりしていて、妙な居心地の悪さが…(^^;)

 

やっぱり「世にも奇妙な物語」の花形といえば、ホラーやブラックなど後味の悪い作品であり、感動モノやコメディは合間合間に添えるぐらいの配分が理想的と思っているのは恐らく私だけではないはず。ネットの反応を見ても、賛否が二極化している印象でしたし。

 

 

ただ、今回は単に"感動モノばっかりの回"として見るのも、少し違うなと思っていまして。例えば、第1話目からストレートな感動モノを配置した点。これ実はすごいことやってるんですよ。

 

我らが「世にも」では、最初の掴みが大事ということもあり、ホラーやブラック、インパクトの強いコメディ……といったジャンルを1話目に持ってくるのが定石。

 

もちろん、過去には「ボディレンタル」(2008)、「未来同窓会」(2007)といった、ハートウォーミングオチを初手に持ってきた例がいくつかありますが、どれも序盤はブラック系の雰囲気を帯びているため、そこから外れている「元カレ~」を持ってくるのは、番組史上から見てかなり異例の事なんですね。普通なら3話目のはずですもん。

 

しかも、5話中3話が感動モノだった「'19雨」と違い、今回は4本中3本を感動オチが占める、史上最大の濃度の濃さ。昨今のウクライナ戦争や値上げラッシュなどによる暗い世相を意識しての判断なのかもしれませんが、ここまで来るとある意味、夏よりぶっ飛んだ事をやっていないか?と。そういう視点で見れば、史上稀に見る挑戦的な回だったのではとも思うわけです。

 

 

が、そんな新たなチャレンジ自体は評価したいものの、前述の通り小粒な回であり、ひどく物足りない印象はどうしても拭えないため、全体評価は★3つ。どうせなら、全話感動モノにするくらいの攻めっぷりを見せて、ネットがすごいことになるのもちょっと見てみたかった気もしますが…(笑) 以上、感想でした。

 

 

さて、この物足りなさを抱えたまま年を越すのはちょっと寂しくありますが、一方で来年への期待はみるみる急上昇していたり。というのも、同じくハートウォーミング中心で不評を買った「'19雨」の次にやってきたのはどんな回だったかということですよ。

 

……そう、数多くのホラーファンから好評を博し、当サイトで行った2010年代作品人気投票でもぶっちぎりの1位を記録した傑作「恋の記憶、止まらないで」を引っ提げた人気回「'19秋の特別編」!

 

今回SNS上では「感動モノだらけでガッカリ『世にも』見るのやめる」「コンプラのせいでホラーがもう作れなくなったんだ」という声が一部で散見されましたが、長年『世にも奇妙な物語』を見続けてきたマニアとしては、決して今回だけを見て早合点なさらぬように!!!ということを声を大にして叫ばせていただきたいと思います。3年前に同じパターンで'19秋をスルーして大後悔した方、ちょこちょこいらっしゃいますからね…。

 

 

色々語ったものの、今年の特別編もおおいに楽しませてもらったことには変わりありません。次回はここからの反動による大飛躍を期待して……また来年、奇妙な世界の扉の前に皆様ぜひ集まりましょう。もしサッパリな出来だった時は、またその次の回に期待するということで(笑)。

 

最後にスタッフ、キャストの皆さん。今年も本当にありがとうございました!

 

来年こそはどうか5話構成に戻っていますように…。