世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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ほんとは面白いゼロ年代奇妙 前編

『あなたが、世にも奇妙な物語をつまらなくなったと思うようになったのはいつからですか?』

 

深夜からゴールデンに進出してから。コンセプトに忠実であった第1シリーズが終わってから。特番シリーズになってから。いや、むしろ最初からつまらなかった。いや、今でも十分面白い……などなど。

 

世にもファンの間でもこの件については様々な見解があるようですが、私がここ10年ほどネットを見ている限りでは、大体2000年を過ぎた辺りであるというのが、世にもファンの間での主流な意見になっている様です。ちなみに、私個人の感じ方では大体2003年前後からマンネリ感が強くなり、2006年からまた少し、2010年になってからはガクンと、って感じですかね。

 

原因として考えられるのは、単純なネタ切れの他に、特番シリーズから続く共同テレビ一社の制作体制に加え、ほぼ同じスタッフで作り続けていたためのマンネリ化。そこから初期からのスタッフが離脱し、若手スタッフや新人の比率が増えていったことによる作風の微妙な変化や、過去作の二番煎じ・ネタ被りな作品の増加……。さらに言えば、テレビ業界の人材不足や、かねてからの題材不足がピークを迎えたのあるかもしれませんが、概ねこの辺りの影響があるのは概ね間違いないでしょう。

 

こういう現状がある上で「初期の作品は良かったよなぁ……」と思ってしまうのは仕方のないことですが、じゃぁ、00年代の世にも作品はそんなにダメかというと、私はあえて「NO!」と申し上げたいという気持ちがあるのも事実。番組の歴史もとうとう10年代に入り、今だからこそ00年代作品の良さを改めて考えてみようじゃないかということで、2000年~2009年の10年間に公開された全109話の中から、ワタクシ白虎がオススメしたい『ゼロ年代の奇妙作品10選』を前後編でお送りしたいと思います。

 

なお、本来ラインナップに入れるはずだった「冷やす女」「美女缶」「過去からの日記」については以前の「感動作品10選」と被ってしまうため、今回除外させていただきました。

 

──ゼロ年代の「奇妙」も、なかなかオツなもんですよ?

SMAPの特別編 (SMAPの特別編) オススメ度 ★★★★★

しょっぱなからご紹介するのは、1作品ではなく、1回まるごと。すいません、やっぱり選べませんでした。なんといっても、2000年代ではNo.1の傑作回だと思ってます。2008年にドラマレジェンド枠で再放送されたのも記憶に新しいですね。

 

特別編の場合、私は各作品の出来は勿論のこと、作品順やそれらが織り成す回全体の調和といった物にも割とこだわる質でして、本回は、星監督&中村脚本という黄金タッグが贈る「エキストラ」に始まり、哲学的雰囲気たっぷりの落合監督作品「13番目の客」、有名CMディレクターを起用した異色作「BLACK ROOM」、シリアスかつ切なさ溢れる「僕は旅をする」、ザ・王道路線まっしぐらの「オトナ受験」と、ジャンルのバランスも良く傑作&佳作揃い。個人的には、懺悔室を舞台に行われる大プロローグも注目していただきたいですね。私の理想の回はまさにこういう感じです。

 

当時はSMAP回ということで「変に作風をいじる感じになっていたら嫌だなぁ…」という心配が若干あったものの、杞憂に終わるどころか、「あぁ、これだから世にもって大好きなんだよ!(T _ T)」と、私の番組に対する信頼が強固なものになったのは言うまでもありません。

 

易々と視聴率が取れる布陣にも関わらず、それに甘んじず面白い物を作ろうとするスタッフらの矜持をしかと見せつけた、全体平均80点以上の高水準なSP回。むしろ、この回で出し切ったせいで以降の元気が弱まってしまったんじゃないだろうかと、今となっては思ったりもするんですが…(笑)

 

一見、イロモノ回の様でいて、何げに番組史を語る上では外せない作品群の揃ったお得な回です。このSMAPの特別編こそが、21世紀最初の奇跡であったと言えるのではないでしょうか!……って、大袈裟すぎですね、はい(^^;)

◆ 奇数 (2000年 春の特別編) オススメ度 ★★★

最初にハッキリ言いますと、本作をつまらない作品だと思う人は結構多いと思います。

ネットを見ていても「ものすごい駄作」と言う声もあれば、「一度見たら忘れられない名作」という声もあり、非常に評価が分かれやすい作品です。この作品をどう思うかで、奇妙な世界の楽しみ方も大きく変わってしまう、通好みな作品であることは間違いありません。

 

バスに揺られ、停車の度に下車する人を見ながら、主人公はふと「さっきから席順通りに客が降りてないか?」という事に気づきます。偶然かもしれないし、奇妙な出来事が起こっているのかもしれないし……。疑念は膨らみ続け、一番後ろの席へと移動してしまうものの、とうとう車内には主人公のみ。

しかし、目的地までまだ先。さぁ、どうする……!? というのがおおまかなストーリーであります。

 

世にも奇妙な物語の醍醐味である「日常に潜む奇妙」をそのまま体現したような、地味ながらもリアルな作品。私は本作を見るたび、体がムズムズしてしまって「こんな事体験したら面白いだろうなぁ」と、明日の日常についつい期待してしまったり。過去何度も「ついに奇妙な世界に入ってしまったか!?」と胸を躍らせた事はありましたが、結局偶然の産物に終わったもので、今でもこういった些細ながらも、面白い出来事の到来を夢見ていたりも。

 

台詞も説明といった無駄な要素を極力少なくし、一夜に起こる不思議な出来事を描いた隠れた佳作。超常現象に期待はしていなくとも、何かちょっとした奇妙を夢見てしまう人には是非ともオススメです。

◆ 厭な子供 (2001年 春の特別編) オススメ度 ★★★

2010年に放送された「厭な扉」の原作本である「厭な小説」に収められている厭な、厭な1編。とにもかくにも暗くて厭。登場人物が厭。展開が厭。ラストが厭。救いがなくて厭……。

 

原作と比べ、ラストの表現がぼかされている為、あのシーンの意味が多少わかりにくくなっているほか、驚くべき展開も、派手などんでん返しもありません。ただ、淡々と厭な空気が画面の中に漂っているだけです。依然として変化の無い厭な空気が存在し続けているのを前に、思わず自分も「厭だ…」と呟きそうになるかも。

 

通常のテレビドラマには無い、暗さたっぷりの異色ストーリー。「暗い話が大好き!」という人も、是非本作でメンタルをじわじわと削られちゃってください。

◆ おばあちゃん (2001年 秋の特別編) オススメ度 ★★★★★

世にも奇妙な物語の名作」という話題になると必ずと言っていいほど挙げられている作品です。恐らく、ここをご覧になるような方は、動画サイトや再放送で既に見ているとは思いますが、挙げない訳にはいかないでしょう。

 

世にも四天王の一人である落合正幸監督の手による、叙情的な色を帯びつつ、あのラストに持っていく展開はお見事。本作で衝撃を受けた人も結構いるとは思いますが、私は「落合監督だから、ラストはこうなるんじゃないの?」と考えていて、それがそのまま当たっていた為、当時そこまでの衝撃は受けませんでした。が、そうであっても胸にキてしまうあのラストはやっぱり壮絶。

 

濃いファンだけでなく、「世にも」初心者の入門編としてもオススメできる作品です。

「世にも」担当作品数歴代1位の記録を持つ、落合正幸作品の真髄を見るべし。

◆ 夜汽車の男 (2002年 春の特別編) オススメ度 ★★★★★

「世にも」の歴史を変えた作品の1つと言えば、大袈裟かもしれませんが、少なくとも「世にも」のコメディジャンルに大きな影響を与えた作品であることは間違いないでしょう。

 

ストーリーは「ただ弁当をいかに美味しく、効率的に食べるかを考えるだけ」という内容なのに、どうしてこんなに面白いのか。TVシリーズ時代ならば、これを"奇妙"と判断した事は絶対なかったであろうにも関わらず、"奇妙"としか言えないこの独特な味わい。「BLACK ROOM」「ママ新発売」などが築き上げてきたB級コメディ系ジャンルがここで完成したと言っても良いのではないでしょうか。

 

ただ、原作者の方は「原作で狙っていた面白さが活かされていない」と、本作をあまり気に入っていなかったそうなんですが、7年後には原作者も満足の映像化となった「理想のスキヤキ」や「耳かき」などの亜流作品も生まれ、すっかり番組内でもこの作風が定着したのは言うまでもありません。

 

何だかわからないけど、面白い。ゼロ年代に突如出現した"奇妙"な名作を是非とも観るべし。

 


 

というわけで、まず前編として2000年代前半の5作品(?)を紹介してみました。

大抵のファンは既に知っている作品ばかりだとは思いますが、改めてこの時期に絞って作品を見直してみるというのも良いかもしれないですね。

 

次回の後編は、ゼロ年代後半の物を中心に紹介してみたいと思います。お楽しみに。