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幻のストーリーテラー Part.2

お盆も済み、徐々に夏の終わりが近づく今日この頃。

毎年「世にも」と勘違いする人々を大勢生み出す「ほんとにあった怖い話」も無事放送を終え、サンテレビで行われているレギュラー時代の再放送も終了間近という事で、世にもファンの方々の間ではだんだんと「秋の特別編」への関心が高まっているのではないでしょうか。

 

今月の中頃辺りから、撮影の目撃情報が複数あった他、下旬にかけて新たに行われる撮影情報も発見し、どうやら今年もちゃんと「秋の特別編」があるのは間違いないようですね。引き続き、ハッキリした事がわかりましたら、サイトの方に掲載していきたいと思います!

 

さて、今回も前回に引き続き、放送版ではカットされたり、台本段階で没になってしまった「幻のストーリーテラー」Part2をお送りいたします。第2弾では第2シリーズ中期~第3シリーズの物をご紹介。

◆ もう一人の花嫁 (1991年4月4日)

【放送版】

教会で結婚式を挙げている二人を見ているタモリ

 

「今ここで、二人は結ばれようとしています。しかし、二人にもいくつかの壁があったはずです。人は人生の中で、数々の決断をしなければなりません。中でも、結婚はその大きな一つと言えるでしょう。特に花嫁にとっては。

 では、そのような決断を花嫁達は一体どのようにするのでしょうか。もしかしたらそこには、他の人にはわからない奇妙なドラマがあるのかもしれませんね」

 Part2最初のストーリーテラーは、数年前にも本ブログでご紹介しました「もう一人の花嫁」を。

 

放送版でのストーリーテラーは冒頭に配置されていますが、元の台本版では物語の最後になっており、私の見てきた中では、前後のストーリーテラーが両方存在する世にも珍しい作品となっています。

【没パート】

「死というのは、この世で一番切ない別れです。もう、二度と会えない。声も聞けない。触れることもできない……。それでも、あなたが、本当にその人を愛していれば、素敵な奇跡はおこるかもしれない。繭子が美奈子に会ったように……もう一度あの人に会えるかもしれない……」

◆ ユリコちゃん (1991年6月20日)

【放送版】

ブランコを漕いでいるタモリ

 

「人が死ぬって言うことは意外と形だけの事で、本当は死んだ人も自分が死んでしまった事に、気が付かない場合もあるんじゃないでしょうか。

 ひょっとしてあなたの周囲の人がみんな演技が上手くて、あなたが死んでることに気がつかないようにしている。なんてことはないでしょうね。気をつけてみてください。本当にあなたは生きてますか」

 

消えるタモリ無人で揺れるブランコ。

放送版では、第3話目の締めらしく作品の内容を踏まえた上で視聴者に語りかけています。決定稿ではこの後、生きてるか確かめる為に自分の頬をつねって「痛っ!」と声をあげるなんてシーンがあったようですが、結局上の様に視聴者に不安や疑念を持たせる形で完成版としています。

 

一方、その前に作られたストーリーテラーでは、「人間の死」という概念そのものに焦点を当てた哲学的な内容となっています。「半分こ」の時といい、堅苦しい内容のものは割と没になるケースがあったりするんでしょうかね。

【没パート】

「人の死の定義というのが、最近なにかと話題になっているようです。

心臓が止まった時だとか、脳の機能が停止した時だとか、いろいろ物議をかもしたりしています。でも案外、自分が『死んだ』と気づいた瞬間に、人は初めて『死ぬ』ことが出来るんじゃないでしょうか?

ひょっとして、あなたの周囲の人がみんな演技が上手くて、あなたが死んでいることに気づかないようにしている、なんてことはないでしょうか?

気をつけてみてください。あなたは本当に生きていますか? それでは、今日はこの辺で……」

◆ シガレット・ボム! (1991年6月20日)

【放送版】

「殺意、それは人間であれば誰もが持っている感情の一つです。

まぁ殺意の分量は人によってそれぞれですが。あ、ちょっと失礼」

 

自販機でタバコを購入するタモリ。そこへ割り込んでくる主人公。

 

「ほんの些細なきっかけにより、巨大に膨れ上がってしまうという殺意も数多く存在します」

放送版では"殺意"をテーマに語るタモリですが、準備稿では凶器そのものに焦点を当てた語りとなっています。

どちらにしろ、タバコの自動販売機前という場所は同じですね。

【没パート】

路上。

タバコの自動販売機に小銭を入れるタモリ

 

「殺人事件における凶器というのは様々です。

拳銃、ナイフ、毒薬、ロープで首を絞める、など、その手段としては本当にたくさんあります。

しかし、それらの方法はたいていの場合、自分が直接、被害者にその場で手を下さなければなりません。

その為、目撃者やアリバイ、凶器の始末など、もろもろの問題が生じ、結局、逮捕されてしまうことになるわけです」

 

自動販売機の取り出し口に手を入れて、タバコを取り出すタモリ

 

「例えば、このタバコを凶器として利用して、人殺しができないでしょうか?えっ、できっこないって?それができるんです」

 

タモリ、タバコのパッケージから一本抜き取り、くわえて火をつける。

◆ 精神力 (1992年4月30日)

【放送版】

「とかく日本人は無理難題にぶつかると精神力精神力と口にしますが、無論、無理は無理。ゆめゆめ、精神力さえあればと無理をしないように。ただ、人間にはまだはかりしれない能力が秘められていることだけは事実のようです」

 

力を込めると、突然後ろの精神力の額が傾く。タモリ、ニヤリと笑い消えていく。

放送版では、精神力というテーマを踏まえ、このようにシンプルな語りで締められています。元の台本版でも語る内容の大筋は一緒なのですが、精神力の発揮方法は大きく異なってる模様です。

【没パート】

壁に貼られた訓示を見ているストーリーテラー

頭には"精神力"と書かれた鉢巻きをして、鉄アレーを持ち上げている。

 

「思う念力岩をも通す。精神一到何事か成らざらん。成程、精神力さえ鍛えれば恐れるものはないか……。

(鉄アレーをおろし)とかく日本人は無理難題にぶつかると精神力精神力と口にしますが、無論、無理なことは無理です。(おもむろに鉢巻きを取りながら)ゆめゆめ、精神力さえあればと無理をしないように。

痛い目にあうのが落ちですから……」

 

鉢巻きの"精神力"の文字が消える

 

「(再び、鉄アレーを持ち上げながら)ただ、人間にはまだまだはかりしれない能力が秘められていることだけは事実のようですが……」

 

鉄アレーから手を離すが、なぜか鉄アレーは宙に浮いたまま。

ニヤリと笑うストーリーテラー

◆ 瞬 (1992年5月7日)

【放送版】

蓄音機の横に立つタモリ

 

「最近私の生活が若い頃に比べると随分早く流れて行くような気がするんです。

あっという間に1週間が経ち、1ヶ月経ったかなと思うと、季節が変わってたりなんかします」

 

レコードの針が飛び、音楽が少し進む。

 

「あ、今針飛びましたよね? 飛ばなかった…(飛び)万が一、時間がこんな感じで(飛び)になると私た(飛び)…と言って…(飛び)…ね?」

 

レコードが終わる。

 

「ん、もう終わっちゃったな。おかしいなこの曲5分あったのになあ。ちょっと短いような気がしますねえ」

時間がどんどん早く進んでしまうというこの作品の導入部にピッタリのストーリーテラーです。

 

さて、あらかじめ申し上げますと、実はこの作品のストーリーテラーは放送版も台本版もまったく一緒です。では何故、今回わざわざ本作のストーリーテラーを取り上げたのかといいますと、台本には、針が飛んだせいで飛ばされた場所を含めた完全版の語りが書かれているからなんですね。

 

本作でストーリーテラーが本当に言いたかったことは何だったのか。

……以下、完全版です。

【没パート】

雀卓に腰掛けたタモリの前に古い蓄音機が置かれ、レコードが回っている。

 

「最近私の生活が若い頃に比べると随分早く流れて行くような気がするんです。

アッという間に一週間が過ぎ一ヶ月経ったかなと思うと、もう季節が変わっていたりするんです。

 

(と、その時、レコードが針飛びを起こす)

 

アッ!今、針、飛びましたよね、ん?飛ばなかったかな……まあいいんです、針が飛んだだけなら。

でも、万が一時間がこんな感じで飛んだら(人間の寿命はどうなるのでしょう)。

そうなったら、(私たちの人間の年令は犬や猫の年令とまったく逆のパターンで、人間年令80歳、実質年齢20歳ということになるかも知れません)。だからと言って、(その若さを保てるかというとそうでもないのですから、これはやっかいな話です)。ま、その時は(皆が皆同じ速さで老けていくのですから、あきらめるしかない)ですよね。あ、もう終わっちゃった……この曲、5分はあるんだけど、なんか短いような気がするなあ……」

◆ 顔色 (1992年7月23日)

【放送版】

「日々の人間の持つ顔色は、その人の健康状態を知る大切なバロメーターです。

時々「顔色が悪いね」などと言われたことはありませんか。

もし、あるとすれば、一度健康チェックをされる事をお勧めします。

単なる睡眠不足だけではないかもしれませんね」

 

鏡を覗くタモリ、顔色が物凄く悪い。

ラストを飾るのは「顔色」。

基本的な流れは同じであるものの、タモリ自身が顔色の悪さを自覚しているか否かという点が異なっています。

【没パート】

薬を飲むストーリーテラー

水で薬を流し込んでから、

 

「(溜息)どうも、ここのところ、仕事が忙しくて、睡眠不足が続いてるせいでしょうか……人に会うたびに『顔色が悪いね』と言われます。自分ではそうは思わないのですが。よほど、悪く見えるようです。人間というものは、自分のことは分からなくとも、人のことは、よく分かるものなのかもしれません」

 

と、鏡を見ると、顔色が悪くなっている。

 

「あれ?」


 

以上で「幻のストーリーテラー」Part2でした。

さて、本来ならば次回Part.3を行う予定だったのですが、一行の違いだったり場所指定が異なるだけの物も多く、あまり目新しい内容にはならないということで、今回で本企画は一旦終了とさせていただきたいと思います。

 

前回と今回で当方の所持分に限って特筆するような物は全て出し切る形になってしまいましたので、後々また台本を入手し、没となったストーリーテラー箇所の数がある程度揃った際には、ぜひ、Part3を行いたいと思います。まだ300話以上も手に入れていない台本があるわけですからね。今後も、奇妙な世界の奥深さに、より一層ズブズブと入り込んでいきたいと思います!

 

なお、他のファンの方から「こんな没ストーリーテラーがあった」というような、情報提供も大歓迎ですので、世にも作品の台本収集に勤しんでいる同志の方は、是非ともよろしくお願いします(^^;)