現在当サイトでは、2020~2024年に放送された20年代前半作品の人気投票企画を実施中(~来年6/30まで)。ファンの皆様の投票をお待ちしております! m(_ _)m
1996年以来、実に28年ぶりにファンの元へと帰ってきた『冬の特別編』。例年とは違ったこの奇妙な冬を、世にもファンの多くは懐かしくも新鮮な気持ちで迎えたことでしょう。
一介のマニアから見ましても、今回は'94春と並び歴代最多となる9人ものプロデューサー(!)が集まった超大所帯の布陣であったことに加え、翌年の35周年へとバトンを渡す20年代前半のアンカー的存在ということもあり、いつも以上に注目せざるを得ない重要回だったように思います。
そんな節目の回であるからこそ、今回は従来の感想記事としてお送りしたいと思うのですが、その前にひとつご報告を。以前お知らせした感想記事の雑感形式への移行は、一旦撤回させていただきたいと思います。
と言うのも、お知らせ後から『今後は出来が悪いと思った回だけ雑感にするということ?』『昨今の新作に失望してもう書く気が失せたということ?』といったお声をたびたび戴きまして。私の悪文&言葉足らずのせいとはいえ、この受け取られ方は非常によろしくないなと。
あくまで、感想記事のための準備時間が(根っからの凝り性が災いし)年々増加する一方だったことと、その負担があまりに大きくなってきたために、"自分にとって無理のないペースで感想記事を続けるための暫定措置"のつもりだったんですよね。ソフトランディングが難しいので、いっそすっぱり割り切ってしまおうと。(準備しないでやればいいだけじゃんというツッコミも当然あると思いますが、そう簡単にいかないのがマニアという生き物が抱える業なのです)。
とはいえ、やはりこのような中途半端な形はよからぬ誤解を招きやすいなと思ったこと、そしてそのような印象を与えてしまうのはこちらの本意ではないため、熟考の末『しばらくは従来通りの形式を継続しつつ、負担の少ないやり方を模索していく』ことに致しました。二転三転野郎で本当に申し訳ありません…(^^;) 今後何かしらの変更があった際は、またその時にお知らせできれば。
……というわけで、今回はなるべく準備に時間を掛けず、面倒くさいマニアの面倒くさい戯言を思う存分に垂れ流させていただきました。以下、そんな駄文にお付き合いいただける心の広い方だけ、どうぞご覧ください。(※ 評価は星5つが最高となっています)
「フリー」★★
来年1月放送の月9ドラマ『119 エマージェンシーコール』の主演を務める清野菜名を起用した今回唯一のホラー作品。
謎のフリー素材のおじさんに付きまとわれるというアイディアは抜群に面白く、まさに世にもでしかできないホラーといった内容。ネット上では『ホラーなんだから普通のおじさんではなく、もっと怖い存在にしないと』という声も見かけましたが、そうじゃないんですよ、この番組は。私はこの発想を100%支持します!
さて、ストーリーに関して。フリー素材という題材を軸に、人間の価値や他人を軽んじる社会の空気といった社会批判要素を折り込んだ展開は好感触。ですが、真っ先に誰もが考えるであろう手近なオチへストレートに着地したのには、落胆以上にただただビックリ。納得感を出すための伏線も十分なほど配置されていますが、それでもベタベタすぎる!
奇妙な存在と同居する羽目になるオチはある意味斬新ですが、微妙にギャグテイストな仕上がりになっていることもあり、若干全体的にチグハグした印象も残ったような。演出面もホラー初挑戦の若手・紙谷監督ということもあってか、どこか突き抜け不足な感も。
そもそも、自分の価値を軽んじられる事に怒っているなら、なぜ自分の画像をフリー素材として配布しているのだろう?という根本的な疑問まで。『もっと自分を見て欲しい+人の価値を軽くみる人間をおびき寄せて復讐したい』と仮定しても、あまりに回りくどすぎる。そして、ウラベさんが本当に復讐するべき人間は、残念ながらフリー素材を直接扱う仕事を100%してないであろう物悲しさ──
過去作の「3つの願い」といい「オトドケモノ」の脚色といい、荒木脚本って奇妙な展開に細かく理屈付けをしたがる一方で、巨大な穴や矛盾を放置する大味っぷりがいつも気になってしまいます。20年代前半の採用数No.1作家さんだけに、もう少しどうにか…発想は毎回面白いんですよ、本当に…(^^;)
以降濃いラインナップが続くことを考えれば、このシンプルなベタさがいい導入になっているとは思うものの、20年代前半ラストのホラーとしてはあまりの物足りなさ。ただ、アイディア自体は好みど真ん中なのでその辺りを加味して★2つ。
「第1回田中家父親オーディション」★★
お笑いコンビ・アンガールズの田中卓志主演の短編コメディ。キャスト先行企画ではなく、プロットの段階で既に"田中家"であったため、その繋がりもあって起用された模様。
視聴者に有無を言わさぬまま強烈なノリで奇妙な世界に引き込み、テンポよく展開を進めていく勢いの良さは、世にも特有のコメディ感たっぷりで満足。短編枠ならではの約15分という尺の短さも、往年の世にもファンの体によく馴染んで◎。
ただ、似たようなネタ&ノリの『小林家ワンダーランド』『アップデート家族』といった近作がどうしても脳裏をよぎってしまい、既視感を覚えずにはいられなかったのが非常に残念。34年も続けばネタ被りは避けられない宿命とはいえ、今この話をここに持ってくる意味とは…という面倒くさい事を考えずにはいられず…(^^;)
それにしても、最近何かと頻発される『突飛な世界観+王道展開ギャップ系コメディ』もそうですが、『家族が突然奇妙な事をおっ始める出落ち系コメディ』もそろそろ食傷気味になってきたかもしれません。年々、世にもコメディの幅が狭くなってきているようでちょっと心配。★2つ。
「CITY LIVES」★★★★
原作は、2023年にフジの深夜枠で放送された同名の連続ドラマシリーズ。
timelesz(旧:Sexy Zone)の佐藤勝利が本人役で主演を務めており、これは獣神サンダーライガー(1991)、FUJIWARA・藤本、ドランクドラゴン・塚地(共に2010)、カズレーザー(2017)に続く、5例目のケースとなります。
さて、この『CITY LIVES』は私にとって非常に思い入れがある作品でして。当時オリジナル版の第1話を見て「世にも+放送禁止みたいで面白い!」とハマってしまい、毎週楽しみに視聴していたんですよね。本作の情報解禁時も、スチールを見るなり「『CITY LIVES』みたいなCGだな…」と思いきや、まさかのリメイク化でひっくり返りました(^^;)
そんな『世にも』版は、主人公&中盤以降のストーリーが一新されているものの、オリジナル版と同じスタッフにより制作された、ある意味"正式続編"とも呼べる仕上がりに。前作の主人公や疑似住民が登場しているのも、実に嬉しいサプライズ。
どんな風に変更されるか心配していた後半の新展開も、主人公がリズムを取り始めた瞬間に思わず「おぉ…!」と口元が綻んでしまいました。その瞬間に全ての伏線が1つに合わさった爽快感もそうですが、何よりあの原作をこんなエモい形にまとめる発想自体があまりにも予想外。なまじ原作を見ていただけに、気持ちの良い裏切られ方でした。
過去『BLACK ROOM』『ママ新発売!』などを手掛けた東北新社による、9年ぶりの他社制作作品ということもあり、この枠特有の「なんかこの話だけいつものと雰囲気が違うぞ!」という感覚を久々に味わえたのも大満足。どうしてもマンネリに陥りがちな特別編をピリッとさせる、こういうスパイス枠は今後も定期的にお目見えしてほしいもの。
なお、唯一苦言を呈する部分としては、大オチのタンザニア行き。どうもこのパートだけ急にオリジナルの雰囲気が一転し、妙に悪目立ちする形に収まってしまった印象が残ります。
「こういうオチこそが世にもっぽいのだ。王道なのだ」という、昨今のあまりよくない固定観念に引っ張られてしまうくらいならば、本来の雰囲気を維持したままふんわり締めてもよかったのではないかなと。せっかくの外部制作枠なんですから、もっと堂々と好き勝手にかき回してくれていいのです。
そんな不満点を差し引いても、非常に魅せる世界観+オリジナルの視聴者も楽しませる丁寧な仕事ぶりは十分高評価に値するでしょう。この番組に、またひとつ新しい風を吹かせてくれたスタッフの皆さんに感謝。★4つ。
「ああ祖国よ」★★
私も大好きなショートショートの名手・星新一の原作を映像化した1編。2004年春の『殺し屋ですのよ』以来、20年ぶりの採用となります。原作未読のため、あくまで『世にも』の映像作品としての感想を。
さて、まずは何といっても本作一番の売りとも言える、現代にも通じる痛烈な日本人風刺。ブラックな描写が連発する軽妙さは、見ていて苦笑いが出るほどキレッキレで◎。
そして、近年どうしても"わかりやすさ"や、"キャッチーさ"にばかり重きを起きがちだった特別編で、こういった渋めの作品を採用したことは素直に高評価。ネット上では若年層を中心に「オチの意味がわからない」という声も幾つか見られましたが、こういう年齢を重ねた上で評価が変わるであろうストーリーこそ、世にもの魅力のひとつでもありますね。
一方、「最後の喫煙者」や「ダジャレ禁止令」といった風刺に一捻り加えたスタイルと違って、本作は「不倫警察」のように直接的なテイストだったこともあり、若干の単調さを感じて世界観に100%乗りきれなかった部分も。
さらに気になったのは『星新一原作』という部分を意識しすぎていた点。
例えば、主人公含めた登場人物の口調があまりにも小説的。これを"原作リスペクト"、"戯画化的表現"などと好意的に見る向きも当然あるでしょうが、いざ映像作品として見るとあまりにも直接的・説明的すぎて、個人的には終始不自然な印象を覚えました。
また、多少の現代アレンジを加えていたものの、昨今の元気のない現状とはかけ離れたイケイケなマスコミ人描写や台詞回しなど、50年以上前の作品ということもあって、どうしても古さを感じずにはいられなかったり。
この辺りは、もう少し原作の良さを活かしつつ換骨奪胎なアレンジができたと思うんですが、やはり星新一というビッグネームに気圧されてしまったのか、原作愛が強すぎたのか、過去の映像化作品と比べてずいぶん硬い仕上がりになっているような……。
相当珍しい劇中での原作者名表記といい、エンドロールにわざわざ原作の発表年を付け加えていることといい、『あの星新一先生が、現代にも通じるこんな物語を書いていたんですよ!しかも50年以上も前に!凄いと思いませんか、皆さん!』というスタッフの興奮っぷりはよ~く伝わっているんですが、その熱量に見合うほどの出来だったかと言われると──。
ただ、濃い作品続きの中での安定の植田演出の雰囲気は、本当にホッとできますね。そういう最後のデザート的なさっぱり感も、本作の良さのひとつと言えるかも?★2つ。
最後に。『完成された短い原作を20分程度に膨らます作業が困難』という理由から、これまであまり採用されてこなかった星新一作品。最近はすっかりNHKにお株を奪われてますが、「やるなら俺が死んでからにしてくれ」とまで言うほど映像化嫌いで知られる氏が、存命中に6回(未放送分含む)も許可を出してくださった唯一の番組こそが、この『世にも奇妙な物語』だということは意外と知られていません。
そんなSF界の巨匠から認められていた名誉ある番組だからこそ、今後も埋もれた名作の数々に果敢にチャレンジして欲しいもの。今回燃えに燃やしたその熱意、まだまだ保ち続けてくれますように!
総評 ★★★
改めて全体の印象を振り返ってみると、各ジャンルのバランスの良さに加えて、全体の時間配分も大きく変わったことから中だるみもあまり感じず、思ったより悪くない視聴後感。放送順の並びもバッチリだったかと思います。
ただ、原点回帰を意識していたという割には、安直なラストに収まってしまった作品が多かったのが非常に残念。濃い作品が揃っていたこともあり、奇妙な世界観を堪能したい層には比較的好評の回であろうと思うんですが、従来からの番組イメージを期待している私のようなストーリー重視派には、どうしても物足りなさが残ります。
相変わらずのチャレンジ精神は大きく買いたいものの、世にもの保守本流かつ大看板である"日常に潜む恐怖を描く作品"の出来が、近頃芳しくないのはあまりに寂しい。この辺の余韻の軽視、類型的な締め方偏重は、今後の課題になりそう…?
というわけで(?)、世にもの真価はまだまだこんなもんじゃないはずだろうという意味も込め、全体評価は★3つ。「CITY LIVES」が大いに気を吐いてくれたのが非常に頼もしくありましたが、個人的にはジンクス達成せず、でしたかね。
さて、2020年から昨年までを担当していたミーハー中村Pに代わり、今後の番組を担うであろう若手Pたちを引き連れたベテラン・高丸監督がメインプロデュースを務めることとなった今年。
特に今SPはその交代の影響が強く見られ、20年ぶりの星新一原作や、他社制作枠の復活はもちろん、ずっと固定化されていた最後の短編枠を2話目に移動させたり、10年ぶりに公式側から『原点回帰』という発言が飛び出すなど、番組がこれまでとまた少し違った色合いになったことを、まざまざと意識させられました。公式Xの告知・実況っぷりも、ずいぶん大人しくなりましたしね。
そんな中でも、中村P時代の定番だった長編モノがなくなり、各話を30分以内に収める時間配分の再調整&地味ながらも特番サブタイトルの積極的改良は大いに評価したいです。何しろ、20年代前半はとりあえず『今宵』と『珠玉』を付けておけばOK、みたいな風潮があったじゃないですか…(笑)
一方で、4話構成、CMタイミング、蝶EDカット……と、毎回お馴染みの不満点が相変わらず継続されているのは、わかっていても言わずにはおれぬ遣る瀬なさ。
その辺は大人の事情ということで飲み込むとしても、せめてテラーパートふたつ分を無理やりドッキングさせて、CMを挟まずに済ませるスタイルだけでもどうにかなりませんかねぇ…? ただただ忙しない印象だけが残って、作品の余韻もへったくれもありゃしないんですよ、ほんと。
恐らく、来年以降からは若手のプロデューサーさんがメインを張る事になるでしょうから、またそこで何か変化があればな……と、こっそり期待しておきます。
最後に、スタッフ&キャストの皆さん、今年も本当にありがとうございました!
来年はいよいよ35周年。30周年時はコロナ禍とまともにぶつかってしまい、"発表されていた記念サウンドトラック盤のリリースが、しれっと無かったことになる"という不運に見舞われてしまったこともあり、是非リベンジを果たして貰いたい。伝説の2015年並みにとまではいかなくとも、過去作配信や一挙放送など、旧いファンにも嬉しいサプライズがひとつは欲しいですね。
他方で、今回の劇中でやけに35周年を強調しているのが少し気になっていたりも。何分、巷では色んな噂が飛び交ってますからね……ひとまずは『ファンみんなが楽しくお祝いできるハッピーな年になる』ことを心の底から願っておきます!
そしてもちろん、35周年もいつもと変わらず、コワくて、素敵で、不気味で、泣けて、笑える、そんなとびきりの世にも奇妙な物語の数々と巡り会えますように。
では、また来年。