世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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'19雨の特別編 感想

令和初となるSP「'19雨の特別編」の放送が無事終了しました。

今回は歴代最遅となる6月のSPということで、非常に待ちくたびれた上での今回。

新時代の幕開けとなる特別編だけに、世にもファンなら注目するしかなかったですよね。

 

というわけで、今回も私の個人的な感想をつらつらと。

評価は★5つが最高となっています。

◆ 第1話「さかさま少女のためのピアノソナタ」★★★ 

原作はミステリー作家 北山猛邦さんの同名小説。

 

タイトルに『さかさま』が入っているせいか画面を上下逆にしたカットが多く、そこがいい違和感を与えていて良かったのでは。女性が落下したまま停止しているカットは初見でドキッとして良いインパクトでした。引きの画面がシュールすぎてちょっと笑いそうになる部分もありましたが…(笑)当初は、新トワイライトゾーンの「静かなひととき」のように、時間を止め続けるしかなくなる哀しいオチなのかと。

 

ラストは正直「なんか(色んな意味で)気持ち悪い終わり方だ…」と思いました。コメディのようで、ブラックのようで、なんと表現したらいいのかわからない感情にただただ妙な後味が残りました。原作では、さかさま少年のくだりは無いらしいので、世にもならではのアレンジといった感じでしょうか。

 

演出を担当した岩田監督は2009年の「真夜中の殺人者」や2016年の「シンクロニシティ」などで、ラストに明るいBGMをあえて用いてギャップを際立たせていたので、コメディっぽいオチでありながら不穏なテイストにしているのは、恐らく同様の効果を狙っているのかなと。果たして彼は助かるのか、それとも……。色々考えるのも楽しいですね。

 

ツッコミどころとしては、物語の展開上、失敗するとピアノが弾けなくなる呪いの部分があまり意味をなしてない所。彼女を助けるために弾き続ければ失敗するかも……という、受け手をハラハラさせるための要素だったのかもですが、あまり伝わって来ず。そして、時間の停止を逆にすれば時間が戻るというやや矛盾している部分も気になります。後々原作小説の方もチェックですね。

 

当初の印象よりも奇妙な雰囲気たっぷりで、思ったより楽しめました。

原作がミステリーものなので、華麗などんでん返しありの内容でしたが「世にも」という枠組みで見るとやや綺麗にまとまりすぎかなとも。第1話としては地味ながらも、本回の明るめ中心のラインナップではいいアクセントになっていたのでは。★3つ。

◆ 第2話「しらず森」★★

原作はミステリー作家 乾緑郎さんの同名小説。

収録本である「思い出は満たされないまま」は連作物だそうで、この「しらず森」はその第1話。

主人公一家のその後の物語も収録されているそうなので、興味のある方は是非お買い求め下さい。

 

さて、率直な感想としては「いい話だけど『世にも』として見ると地味すぎるかな」といったところでしょうか。『世にも奇妙な物語』というよりも、『少し不思議な物語』といった印象。小説だとこういうのがいい味を出すんですけれどね…。この微妙なさじ加減が難しい。★2つ。

◆ 第3話「永遠のヒーロー」★★

これまでありそうでなかった特撮もの。一応「世にも」自体が広義の特撮番組なんですが、ヒーローものはこれまで無かったですね。

 

また、劇中のスーツは茨城県ローカルヒーローイバライガー』の物をそのまま使用。スーツアクターや監修もそちらのスタッフさんに全面協力していただいたとか。

 

感想としては、思っていたよりはちゃんとしていた……ですかね。こういう一見突飛な設定ほど小奇麗にまとめてくるのが「世にも」あるある。どんでん返しは予想できませんでしたが、それでも個人的にそこまで好きなタイプではなく……。色々と辻褄が合う面白さというのはありましたが、そこの部分の面白さのみに賭けた感じだったかなと。NHKの「トクサツガガガ」を楽しんで見ていた人間としては、バトルでもう少し頑張って欲しかった部分もあり。

 

良かったポイントしては、娘の手術の結果をそのまま描写せずに、どうなったかが表現できている所。近頃は「死んでる!」みたいにその辺を馬鹿丁寧にセリフで言わせたりすることがありましたしね。ほか、登場人物の名前が往年の特撮ものの役名や俳優名になっているところもニヤリと。芸が細かい(^^;)

 

基本この手の話はハートウォーミングで卒なくまとめられる一方、その卒のなさが物足りなさに繋がっているのかも。★2つ。

◆ 第4話「人間の種」★★★

恐らく「美女缶」を思い浮かべるファンの方も多かったと思うので、例に漏れず私自身も先は読めましたが、導入部からわかりやすく奇妙な展開に入り込める定石な作りで、ある意味一番「世にも」らしい作品だったのでは。

 

ただ、やはりハートウォーミングものが3連続で来るとさすがに食傷気味…(^^;)

「ブラック大好き人間」が跳梁跋扈しているのがこの業界(?)なので、やっぱりいい話は最低でも2本くらいがちょうど良い…かな?とはいえ、今回で一番雨が似合うタイトルの名に相応しい作品だったのでは。★3つ。

 

……ところで、種から生まれた母親の亡骸はどうしたのか気になってます。消えたと考えるのが自然ですが、私は『ドライフラワーにした説』を勝手に一人で推したいと思います。……それただのミイラか。

◆ 第5話「大根侍」★★

5年間封印されていたという『おバカ奇妙』が堂々(?)の復活。
ショートショート作家 田丸雅智さんの同名小説を2014年の「空想少女」のコンビが映像化した一編。

 

この手の話はとにかくファンの好き嫌いがくっきり分かれるタイプなわけですが、私は嫌いではなかったです。この手のキュートな女の子ものを上手く魅せるの結構難しいんですよね。ただ、やっぱりよく考えると「大根の刀って何だよ」「ブリガンマンって何だよ」となる冷静な自分もいるという…(笑)

 

ただ、ストーリーがあまりにも単純すぎること、そして何より前後編の構成…これが大幅マイナスです。

勢いが必要なコメディもので前後編に分けてクールダウンしてしまう、そしてED後に後編を持ってくる。前回同様本編作品でこれはいただけませんねぇ。★2つ。

 

なお、本編に登場した野菜はスタッフがサラダとポタージュにして美味しくいただいたそうです!

◆ 「ストーリーテラー」★★

いつもは評価対象外ですが、今回は特別にドラマ仕立てだったので。

「雨の特別編」ということで、普段と違った趣向を……との意図で企画されたそうです。

 

雨の夜に男がストーリーテラーと出会い……というシチュエーションから思い浮かべずにいられないのはやっぱり「映画の特別編」。しかも、演出は世にも四天王の一人であり、番組の立ち上げからプロデューサー・監修役として携わり続けてきた小椋久雄監督!これはもう約束されているものだろうと確信してました。

 

……が、いざ蓋を開けてみたら、どうもいまいちな出来。

例えばテラーの導入部の台詞を見ていくと……。

 

「音楽はお好きですか?」→本編へ。

「正義の味方に捕まるといいですねぇ」→本編へ
「刃物は人を惑わす魔物ですよ」→本編へ。

 

いやいやいや、これはさすがに味気なさすぎる!!!

 

劇場版のようにテラーが男に物語を聞かせるテイじゃないのかと思っていたら「さっきから訳わかんねぇ話ばっかりしやがって」と男が言ってるので、どうやらちゃんと聞かせていた模様。

 

普段みたく長々喋らなくても良いので、せめて「音楽といえば、こんな奇妙な曲があるのをご存知ですか?」みたいな台詞をちょっと付け加えてくれるだけでだいぶ印象が違ってくると思うんですけどね。ただの短い映像をぶつ切りにして配置しただけという感じをかなり受けました。

 

雰囲気と試みは◎。だけどテラーパートというコンセプトから見ると非常に勿体無い。
いつもの椅子が出ないSMAP編(2008版)以来のEDや、エドガー・アラン・ポーの某作品風なラストなどは良かったんですけどね。小椋演出が存分に発揮されなかった構成の惜しさで★2つ。

 

あ、今回は変わり種のテラーパートになったため、使用されなかったテラーBGMの各バージョンを提供部分に流すファンサービスはちょっとグッときました(笑)

◆ 総評 ★

今回は令和最初の特別編ということもあってか、珍しく明るめの作風を中心とした回に。

 

これまでも暗い世相に対抗してあえてコメディを中心とした回なども存在しているため、恐らく新元号最初&梅雨の時期ということで、じめじめ気分を吹き飛ばすようなハートウォーミング系を取り揃えてみたんじゃないかなと。

 

ただやっぱり、世にものファン層は『ブラック大好き人間』がひしめいている訳なので恐らく熱心なファンほど物足りないという思いが強かったのではないでしょうか。かくいう私も、ほっこり作品が続くとたとえ完成度が高くてもじわじわ物足りなさが……(^^;)

 

たまにはこういう回があっても良いとは思うんですが、「こんないい話ばっかりの世にもなんて世にもじゃない!」という天の邪鬼な自分もいたり。とりあえずは「知らなかった。世にもって怖いのだけじゃないんだ」といった新規ファンへのアプローチ回だと解釈して、次回のSPではそんな視聴者をどん底へ叩き落とす意地の悪い作品群の到来を密かに期待しています…(笑)

 


 

……さて、ここからは各話以外に対する不満を。
マニア特有のめんどくさい言説が炸裂するので、興味の無い方はここまでで大丈夫です!

 

まず第一の不満点はやっぱり『本編を前後編に分ける』手法。ショート奇妙はまだ許せるんですが、本編でまでこれをやられるとやっぱり困ります。

 

そもそも、どうして前後編に分けるのか。前回の「マスマティック~」でも本気で首をひねったんですが、先日コードアワードでの『「女子高生AIりんな」企画('16秋)紹介ページ』(現在削除済み)のスクショを見返していてその答えらしきものを見つけたため、ちょっと引用。

 

イメージ 1

 

前編・後編に分けて放送することで、Twitter上で話題で気づいた人が番組後半からの視聴に間に合うようにし、視聴者増加へ繋げた。

 

……というわけで、『ネットでバズりそうなものを分けることで、SNSからその流れに乗るためにやってくる後追いの視聴者を引き寄せ、終了ギリギリまで視聴者数を増やす』というのが制作側の狙いと見てほぼ間違いないでしょう。

 

前回の「マスマティック~」も前後編に分けたことで不評の声をかなり目にしましたが、それらを天秤にかけてもやった方が得ということなんでしょうかね…。

 

これまで、様々な手法を用いて番組PRに注力する「世にも」の前向きな姿勢を評価してきた私ですが、今回の件でちょっと後悔してきたのも事実でして……。

 

なんかその風潮が徐々に本編内に侵食してきて、逆に悪影響を及ぼしてきてませんか!?

 

これまで老舗的な風格でやっていた「世にも」も、ふと気がつけば、ラテ欄が『○○○が○○に…!?』といったわかりやすい煽りで埋まったり、提供部分やEDに『続いては感動作!』『このあと衝撃の結末が…!?』といったネタバレテロップが出たり……。そこへ加えての本編の前後編。EDで終わらず、後編で終わるなどなど、番組の根幹を為す部分まで徐々にPR効果のために削がれてきてるのを目の当たりにすると、これ確実にダメな方向に進んでないか…?と、震えました。

 

少しでも多くの人に見て欲しい気持ちはよくわかるんですよ。番組ファンとしても望ましいことですしね。恐らく数字の上でもある程度結果が出ている上でのこういうことなのだと思います。

 

けど、バラエティの露骨なCMまたぎや、伸ばし等が徐々に視聴者のヘイトを稼いできている昨今。各々が抱える「これが世にも」というイメージの中に一切無いであろうこういったダメな要素は、短期的に結果を出せても、中長期的に見れば確実に番組を蝕んで、寿命を縮めることになると思うんですよ。

 

PRは大事です。PR企画を楽しんでいる若いファンの方々を見るとほっこりします。今後も続けていってくれたら嬉しいな~と常々思っています。

 

ただ、線引きは大事でしょう。これまで培われてきた番組の雰囲気そのものを台無しにしかかってまでやるPRはやらない方がマシです。これまで幾度も挑戦的な作風を歓迎してきましたが、こういった節操のないやり方は挑戦でも努力でも工夫でもなく、制作側の自己満足にしかなってない迎合以下の何かでしょう。

 

「PRをがんばってして多くの人に見てもらおう!」という意識が「ちょっとでもPRをねじこめる隙間があればどんどんねじ込んで効果をあげよう!」に変わっていっていないですか。

 

現在、徐々に制作陣も第4世代へ徐々に移り変わろうとしている時期。こういった悪い傾向を次世代に繋げることのないよう、PRは大事ですが、今の状況はよろしくないので、もうちょい別な方法も考えてみませんか?とネットの片隅でささやかな抗議をしておきたいと思います。

 


 

はい、まだ行きます。続いて第二に……。

わざわざ「雨の特別編」という幻の回と同じ名前を付ける必要があったか!?
もう『梅雨の特別編』で準備していた私の心を一気に曇らせた一番の要因です。

 

もしかしたら、あのお蔵入り回の全編解禁や、何かしらの関連性があるかもしれないので、なるべく放送前にグチグチ言わないようにしていたのですが、何も無かったので言います。

 

このタイトルを付けてしまう絶望的センスの無さ!!!

 

これが作品内容の場合、私も所詮素人なので監督や作家さんの意図を見抜けていないだけだとか、そうせざるを得ない大人の事情等が背後にある場合があるため、こんなことは口が裂けても言えません。……が、特番タイトルはその辺一切関係ないと思うので。

 

たまたま被ってしまったのならまだしも、制作スタッフは「雨の特別編(1991)」の存在を確実に知っているわけじゃないですか。大した関連性もなく『梅雨だし、お蔵入りのあれ使ってみるか』みたいな安易な使い方をされたら「勘弁してくれよ」となります。ファンサービスのつもりなのだとしても、ファン心理が全然わかってないなと言わざるを得ません。

 

雪の特別編、桜の特別編というのが過去にあったのならまだわかりますが、これまでアニバーサリーイヤーを除き、基本季節(春・真夏・秋・冬)か行事(七夕・聖夜)が付けられてきたわけじゃないですか。その法則から言えば『梅雨』という最適な言葉があるのに、何故わざわざファンから幻の回として語り継がれてきた唯一無二の「雨の特別編」のタイトルをこうも大した考えなくポンと用いられるのか。その辺の感覚が私にはまったく理解できないです。

 

名付け親はどなたなのかはわかりませんが、仮に若手の方だとしたら番組の今後がちょっと不安になりますね…。というわけでこれらの抗議の意味も込めて、大幅マイナスの★1つ。

 

作品内容については思いっきり好き勝手してもらいたい私ですが、こういう番組の『粋』だとか『トーン』の部分をぶち壊すようなやり方だけは本当に地雷なので、勘弁してください…。

 

以上、めんどくさいマニアの愚痴でした。

◆ 追記 (11/18)

編成を担当したフジの渡辺さんのFcebookに命名の経緯が書かれていたのを発見。

 

 

は、反対の声を押し切ってまで…!?!?!

 

この渡辺さんは、昨年の'18秋から番組に携わり始めた30代の若手プロデューサーさんなんですが、ホントに新参の若手スタッフが軽い気持ちでしなくていい事をやっていたんだなぁ…と残念な気持ちが100倍増しに。てっきり共テレ方面だと思っていたら、まさかの犯人はフジ側にいたとは……。

 

いくら何でもこれは……これは無いですって……(T_T)

 


 

さて、色々書き連ねてきましたが、初見では頭をからっぽにして番組公式Twitterにツッコミをいれつつ、無邪気な小学生の如く、おもいっきり楽しんでいたのも事実。やっぱり年2回のお祭りなので存分に楽しむ姿勢でいなくちゃいけません。

 

色々文句は出ますが、改めて「世にも」好きだな。と再確認させられるばかりです。

今回楽しめた方も楽しめなかった方も、次回さらなる奇妙な物語を早くも期待していることでしょう。

 

そんな方々には、今回の良かった部分や悪かった部分について、番組宛てにメッセージを送られることをお勧めしておきます(https://www.fujitv.co.jp/kimyo/message.html)。番組関係者に視聴者の声が一番届くのはこっちですからね。このタイミングで思いを伝えるのは大事です!

 

というわけで「'19雨の特別編」の感想でした。

 

スタッフ&キャストの皆さん、今回も本当にありがとうございました。

 

次回は秋……もしかすると冬か聖夜になるかもしれませんが、今回の反動でえげつない作品が来るかもとこわごわしつつ、次回の特別編を楽しみにしていますね!