世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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'14春の特別編 感想

今年最初のお楽しみ「世にも奇妙な物語 '14春の特別編」が無事に放送を終えました。

 

3年前の震災による製作スケジュールのズレのため、これまで4月下旬~5月中旬といった変則的な時期に放送されていた春SPでしたが、今回従来通りの4月上旬に帰ってきたということで、見てて非常に懐かしい気分に。

長年染み付いた"奇妙な体内時計"のおかげか、やっぱりこの時期じゃないと、調子狂っちゃいますからね~。

 

昨年は国内外のネット評価を見ても、数年ぶりに良作に恵まれたということで、上昇傾向が感じられたほか、

今春は中国リメイク版の製作がスタート、ウチのサイトがオープン10周年など、嬉しいニュースが続きますので、

是非この春SPではその幸先の良いスタートを切ってもらいたいと、放送前から期待感が10割増し。

 

例年以上にハードルを上げつつも、ちゃっかり心の保険をかけて、今回もじっくり鑑賞させてもらいました。

というわけで、以下、今回の特別編についての個人的な感想を。なお、評価は★5つが最高となっています。

◆ 第1話 「ニートな彼とキュートな彼女」★★

原作はジュブナイルポルノライトノベルを中心に活動されているわかつきひかるさんの同名作品。

創元SF短編賞の受賞作・最終候補作をまとめたアンソロジー「原色の想像力2」に収録されています。

放送に先駆け、電子書籍版の販売も開始されたので、手軽に読まれたい方はそちらを是非どうぞ。

お値段は、ポッキリ100円です!(宣伝)

 

さて、ざっと通しで見た最初の印象としては、手堅く無難な所でまとまっているという感じでしょうか。

よくよくストーリーを見れば、意外な真相あり、主人公の成長あり、別れありと、テーマも起承転結もハッキリしているのがよくわかるんですが、総合的に見ると、初めから75点くらいを狙った優等生的な仕上がりになっているような印象を受けました。

 

演出面も淡々としているせいか、映像的に盛り上がりの無いまま展開していったイメージが強かったです。

ストーリー的に重要なMM-2020αとの別れや、真相が判るシーンなど、あまりにあっさりしすぎているので、「まだ何かオチがあるのか?」と思っていたんですが、そのまま終わってしまい、若干もやもやしてしまったという……。あと「そもそもバイトしながら就職活動をしている時点で"ニート"では無いのでは?」という点もちょっと引っかかりました。

 

ストーリー自体はちゃんとしていたので、演出次第でもっと良くなったんじゃないかなと惜しい気持ちが。★2つ。

◆ 第2話 「墓友」★★★★

私が初めて「墓友」という言葉を聞いたのは、数年前のニュース番組か何かだったと思いますが、改めて考えると奇妙極まりないですよね~。これぞ奇妙な世界と言わずして何というかという奴ですよ。

浜の真砂は尽きるとも、現実世界に奇妙の種が尽きることはまだまだ無さそうです。

 

さて、感想に入る前にまずこれだけ言わせてください。

松木監督、一体どれだけのポテンシャルを秘めているんですか…私はそれが一番のホラーでしたよ…

 

今回「心霊アプリ」「呪web」「0.03フレームの女」に続き、4作目となる松木ホラーでしたが、

回を増すごとにしっかり怖い演出がグレードアップしてて、今回初めてフツーに怖がれました。

脚本としても、予想の付く展開でありながら工夫の色が垣間見え、数年ぶりに脚本演出両面から見てちゃんとホラーになってるホラーを見れて満足です!もうここ数年の世にもホラーの惨状を思えば、やっと及第点取れる物が出てきただけでえぇ、もう有難い。

 

内容としては91年の「ともだち」をよりどぎつくに料理した感じに。

引きずり込まれるシーンでは、わかっていながらもちょっとビックリしてしまい、『「鏡」(91年放送)の再来だー!』とテレビの前で興奮し、「火葬してるんだから手は出ないだろう…」からの、実はそれは現実でなかったという展開も、まんまと引っかかってしまい、一瞬混乱するダメな大人っぷりでしたが、気持ちの良いホラーを堪能させていただきました。

 

正直、松木監督は今後ホラー担当として大丈夫なんだろうかと思った事が幾度もありましたが、

今回は笑ってしまった所もなかったですし、丁寧な作りだったという印象を受け、恐怖と共にかなりの安心感を覚えることが!着実に、ホラーが上手くなっている様を見ていると、まるで我が子の巣立ちを見送る母鳥の如き境地に……ってプロ相手に失礼な物言いですね(^^;)いや、でもそれくらいホッとしたのは事実なので仕方がない!

これでやっと、心の底から松木監督は世にものホラー担当であると言うことができます!

 

というわけで、前回言及した通り、例のことを言わせていただきます。

 

すみません、これまで松木監督を見くびってました!今後もより一層の秀作ホラーを期待しています!

◆ 第3話 「空想少女」★★★★

原作は、第1回『このライトノベルがすごい!』大賞特別賞を受賞したおかもと(仮)さんの「空想少女は悶絶中」。

ミステリー、ラブストーリーといった他の部門の受賞者との競作アンソロジー「5分で読める! ひと駅ストーリー 乗車編」に収録されていますが、今回の放送に合わせ、本作を収録したおかもと(仮)さんの短編集空想少女は悶絶中」(宝島社)が4月4日に発売されたばかりなので、興味のある方はそちらも是非どうぞ。

刊行に際し、新たに書き下ろされた続編「空想少女は潜伏中 腐れ維新」も入っているほか、帯にデカデカと「世にも」のロゴが入っているようなので、ファンならば"買い"です。私は買いました。

 

さて内容ですが、92年の「妄想特急」や、95年の「友子シリーズ」など、番組では古くからお馴染みとなっている主人公が過剰な妄想を繰り広げ、とんでもない方向へ発展するタイプの作品ですね。

この長々と一人語りをしながら、どんどんおかしな方向へ進んでいくパターンは、「友子シリーズ」大好きな私としては、すぐさま心をわしづかみに。

 

加えて、昨年「あまちゃん」にガッツリはまった一人として、能年×世にもというのは結構嬉しくて「アキちゃんが世にも出演か…立派になって…」と、思わず感慨深さを覚えてしまい、現実と虚構の区別が付かないダメ人間っぷりがここでも。

 

ちなみに、某スタッフさんによると、ダメ元でオファーを出してみたら、まさかの事務所OKを貰い、スタッフ間では口々に“奇跡だ!”と盛り上がっていたとか。きっとこれも奇妙な世界の(以下略)

 

そして、本作で特筆すべきなのは、やはり植田演出の炸裂っぷり! これぞ植田泰史監督作品!

冒頭、あえて穏やかな作品そうに見せて、ギャップを広げようとするやり方の段階からツボにはまってしまって、その後の留まる所をしらない演出の悪ノリっぷりが非常によかったです。過去の「石油が出た」や「人間電子レンジ」で感じたような、ぎこちなさや空回りも感じず、久々に楽しい植田演出作品が見られたなと思います。

 

正直、放送前は戦国時代のシーン辺りを大袈裟にやりすぎて、シラけちゃいそうな気がしてはいたんですが、その辺はあっさりと流してくれたおかげで、そこまでクドさも感じず、最後までたっぷり楽しめました。

 

同じ悪ノリでも「JANKEN」や「石油が出た」のような、ベタなストーリーに特異なシチュエーションをのっけるタイプの作品と違い、私はこういう、特異ながらもギャップの面白さ頼みにならないタイプの作品が好きみたいです。

あまちゃん」好きの欲目で見てしまわない様にするつもりでしたが、今となっては欲目以上の出来で、十分良作だったかなと。

 

あえて欠点を挙げれば、好き嫌いが激しく分かれそうですし、オチが弱いですね。個人的には「友子の長い朝」くらいの物を何かぶちかまして欲しかったです。また、世間の求める朝ドラのイメージをそのまま踏襲していたので、守りに入りすぎていたかなと。その辺はオファーを受けるにあたって所属事務所側の要望もあったと思いますが……。

 

とはいえ、もうそんなことはどうでもよくなってしまっている自分がいるので、全然問題なし! ★4つ。

◆ 第4話 「ラスト・シネマ」★★★+0.5

走馬灯を編集するという設定だけで★3つ。これはもう設定の勝利ですね。

このアイディアを思いついた時、脚本家の人は手応えを感じたんじゃないでしょうかね。

 

ストーリーとしては、彼氏が実は彼女の事を想っていて……と、「まぁ、そうなるだろうな」という展開ではありましたが、こういった新鮮な設定が加わると、意外と気にならなかったですね。結構、私の中では好き嫌い分かれやすい所なんですけども大丈夫でした。

 

さらに、下手に主人公も生き返ってハッピーエンドという展開にしなかったのは、良い判断だったと思います。

ここで彼女が生き返ってしまえば、彼女の決断も、涙も全部無駄になってしまうわけですからね~。最後のオチも、納得しない人もいるでしょうが、私はあれで良かったんじゃないかなと。

 

安易な展開に流れることの無かった冷静な筆致に0.5プラスして★3.5。

◆ 第5話 「復讐病棟」★★★★

原作は、過去に番組で「脅威の降霊術」「ロンドンは作られていない」「言葉の戦争」「携帯忠臣蔵」などが映像化された清水義範さんの同名小説。本作が収録されている「アキレスと亀」は、既に絶版となっているので、残念ながら購入したい場合は古本屋などを探すしかないみたいですね。

 

さて、学生時代に体罰を受けた男が、数十年後に教師へ復讐をするというのは、90年の「仰げば尊し」でも使われたモチーフですが、こちらは陰鬱さが比べ物にならないという……(^^;)ここまで振り切ってくれると、今後の新作もちょっぴり期待できますね。さらに、密室で2人の男の会話劇+ラストの演出やサブタイトルの出方が97年の「女は死んでいない」っぽいな~なんて思ったり。

 

暗いし、ブラックだし、ラストがゾクッとするし、と多くの「世にも」ファンの大好物な作品ではあるとは思うんですが、個人的には演出の功績が大きいというイメージでしたかね。ストーリー面で物足りない感がありました。

といっても「目の前で息子の足を切断してやればよかったのに」という様な刺激を求めているのではなく、物語自体が小奇麗にまとまりすぎてて、その後の展開がわかりやすいかな…と。個人的な心情として本作にあんまりケチはつけたく無いんですけども、ブラック作大好き人間としては、どうしても厳しめに見てしまいますね。

 

濃い世にもファンからほぼ文句が出ないであろう内容&最後まで気を抜かない丁寧な作りに★4つ。

 

そして、体育教師役が赤井英和さんということで、ドラマ「高校教師」を思い出してしまったのはきっと私だけではないはず(笑)

◆ 総評 ★★★★

「あれ、おかしいぞ…普通に面白かったなんて…えっ、そんなはずは…」

 

総評を書く際に、一瞬そう考えてしまった時点で、過去何度もバキバキに折られてきた心の脆弱っぷりを思い知らされましたが、今回、5作中4作がヒットし、ジャンル的にも内容的にもバランスが良く、これまで「う~ん…」「あぁ…」「そういう感じですか…」などと呟き続けてきた近年のSPでは、『久々にちゃんとしていて、何故か動揺させられている』というのが率直な感想です。昨年の春SPや秋SPも良作があるにはありましたが、どれも2作程度に留まっていたので、今回私の中では2010年代でダントツの出来です。2010年~2012年前半の「あ、これ本当にヤバい…」と思えた暗黒期から、ようやく00年代後半レベルの所まで持ち直してくれた事も鑑みて、大甘の★4つ。

 

そして、ようやくここへ来て、一応第二世代のスタッフによる「新たな世にもカラー」の基軸となる回が生まれたんじゃないかなとも思ったり。

 

恐らく、私のような初期からのファンや、動画サイトで過去の名作を見てきた若いファンの方から見て、今回は正直期待はずれに思った方も実は多いと思います。私としましても「全話トータルで見て、今回は100点満点中で何点?」と聞かれれば、上記の様な高評価であっても「40点」と答えます。

そりゃぁ、そうですよ。地味ながら現実に近い第1シリーズの雰囲気は大好きですし、特番シリーズ初期の脂の乗りっぷりは、今なお色褪せない名作の宝庫です。落合監督の叙情的な色を帯びたホラーなんて堪らないですし、星監督の現実から数センチ宙に浮いた様な作品群は「ザ・世にも」そのものです。

 

しかしですね、皆が思い浮かべる様な名作を作ってきたスタッフは出世・引退などで、2000年代半ばにはほとんど居なくなっています。20年以上も、様々な脚本家や作家の書いた数万本以上のプロットや原作に目を通してきての今。年々ネタ切れが顕著になっています。数十社の制作会社による競作だったシステムから、共同テレビのみの一社制作に切り替わり、特番化し、大きな冒険がレギュラー時期よりしにくいです。番組開始時から中心となってきたスタッフや制作スタイルが変わり、ほとんどのパターンをやりつくせば、こういう現状になってしまうのは当然の成り行きではあります。

 

「ならこれ以上醜態を晒す前にに辞めてしまえば?」という声も当然あるとは思いますが、私はそんな中でもあえて「世にも」を作り続けるべきだと思っているんですよ。

 

「世にも」って、絶対保守的になれないドラマなんですよね。ネタ、展開、題材、常に新しい物を求められ続けていますし、時代によって奇妙の定義も変わってきます。

元々この番組は「普段の仕事じゃ作れない、自分たちが作りたいドラマを作ろう」という所から始まってます。そして、十分その目的を果たし、第二世代へと移り変わった今、今後のテレビ界を担う若手スタッフが作りたい、この番組だからこそ作れる環境は絶やして欲しくないなと思っています。醜態を晒し続け、罵詈雑言を浴びせられながらも、それでもいつかキラリと光る物が出てくるはずだと。逆境になればなるほど、知恵を絞るしか無い訳じゃないですか。そこで終わればそれまでの番組ということ。

 

悩みながら苦しみながら脚本を作り、演出プランを練り、時にはあの人気者が意外な役柄を経て見せた演技を経て生まれる将来の傑作。さらに番組に関わることで才能が見出され、名ドラマを生み出すかもしれない方々に、大いに期待したいじゃないですか。視聴者にとっても悪い話じゃありません。

「世にも」に作品が一作も採用されなかったものの、そこを経由して別番組でデビューし、後に「相棒」を生み出した輿水泰弘さんの例だってありますしね。

「世にも」より面白いドラマはこの世に腐るほどありますが、今のテレビで一番面白いドラマが生み出せるのは「世にも」しかないと思ってます。今の若手クリエイターだって、昔の人々に負けてはいないはず。私含めた懐古主義なファンをぜひギャフンと言わせて欲しいです!私はそれが一番の楽しみなんです。

 

何はともあれ、ここ数年の間の数々の迷走を経て、従来の良さを踏まえた上での新しい奇妙な世界の光明がようやく見えた気がします。個人的にはまだまだ100%の満足には程遠いですが、これまで以上に今後の世にもが楽しみになりました。次回もぜひ右肩上がりでよろしくお願いします!

 

……という訳で、以上今回の新作に関する個人的な感想でございました。

 

作品以外の事で言えば、なんといっても「あまちゃん」後初のドラマ出演ということで、フジ側の盛り上げ方が半端じゃないというのが印象的でしたかね。スポットに堂々と煽り文が入っていたり、単独スポット以外全てのバージョンに本作をメインとして組み込むなど、こういうのは私の知る限り初めてのことだったので、かなりビックリ。

過去に木村拓哉松本潤などが出た時や、SMAPの特別編の時でさえ、ここまで露骨なプッシュはしていませんでしたからね~。ここまでお膳立てするほどですから、既にフジテレビ夏~秋クールの連ドラへの内々定くらいは決まっているのかな、なんて下衆の勘ぐりも…(^^;)

 

フジとしても、昨今の状況から勝負を賭けたかったのでしょうが、個人的にはこういう宣伝方法は辞めて欲しかったですねぇ~。「世にも」の骨組みの部分に対してのみガチガチの保守という信条だからというのもあるんですが、今回のような猛烈推しは、下手にハードルを上げすぎて当人にも作品にも悪影響を与えかねませんし、放送後に必ず来るであろう反動を考えると可哀想な所もあったので…(- -;)作品を酷評されるのは平気で見られますが、キャストそのものを酷評されるのは誰であっても悲しいものが…ね。

 

後は、今回ライトノベル作家の台頭というのが一番の注目ポイントでした。

昨年の「ある日~」は『ザ・ラノベ』全開な世界観だったので、賛否両論かなり激しかったですが、私としては大歓迎だったんですよね。色んなジャンルの色んなネタを、とりあえず出来はどうであれ、採用してやってみるという姿勢は、この番組の真骨頂な訳ですから。もちろん、だからといって同じようなジュブナイル系ネタばかり出されると困りますが、チャレンジしてみた意義は大いに買いたかったんですよ。2002年の「声を聞かせて」で既にラノベレーベル作品の映像化の前例もあるので、別に気にもなりませんでしたし。

 

若者への媚び云々という意見も見受けられましたが、「ニートな彼~」はSF短編賞の最終候補作、「空想少女」は様々なジャンルの作家による競作ショートショートの1編なので、様々な短篇集を見ていく中で『採用してみたら作者がそうだった』ということなのかなと。近年のインタビュー記事などを読むと、まず作家が提案したいプロットを提出し、採用が決まってから原作付きだとわかるという制作システム(?)らしく、安心はしています。

 

とまぁ、長々と語ってきましたが、今回は予想以上に前回からの向上が感じられただけに、満足の一言です!

2010年頃の悪夢は、この飛躍の為の準備期間だと思えば、4年間疼き続けていたトラウマがようやく和らぎ始めますよ…(T_T) 回全体のサブタイトルも初期を思わせる雰囲気たっぷりの物でしたし、昨年感じた上昇傾向が勘違いでは無かった事がわかっただけで十分です!

 

最後に、今回の制作に携わったキャスト・スタッフの皆さん、ありがとうございました&お疲れ様でした。

次回は秋…といいたい所ですが、7月末には中国版「世にも」の配信が控えているので、今年は夏の時期も退屈しなくて済みそうです。

 

本当はもっと書きたい事がありますが、さすがに冗長になりすぎるので、これで締めたいと思います。

 

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