世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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ほんとは面白い?隠れた世にも奇妙な物語 前編

ネット上で「世にも奇妙な物語で一番面白い話を教えて」といった質問を頻繁に見かけますが、逆に「隠れた名作・佳作」を教えて欲しいという声はあまり見受けられません。

 

そんなの当たり前だと言われればそれまでですが、音楽ファンが大ヒット曲よりも隠れたアルバム曲を推すように、漫画オタクが大人気漫画よりも同じ作家の初期短編を推したがるように、マニアが"隠れた"作品を愛でたくなるのはもはや全世界不変の心理。

 

そこで前回の「感動作品10選」に続き、今回は私がオススメしたい「隠れた名作・佳作・珍作」10選をご紹介しようと思います。一番面白い物は色んなサイトで飽きるほど取り上げられているので、わざわざウチで取り上げるまでもないでしょうが、こういうマニアックなタイプの作品群はウチが取り上げなければなかなか言及されることがないでしょうしね……(-_-;)

 

なお、"隠れた作品"であるかどうかの判断基準ですが、世にもファンにはお馴染みの「世にも奇妙な物語データベース」さんで、作品のコメント数がヒトケタの物を、隠れた作品だと判断しています。本当にネット上でもあまり語られる事のない隠れた作品ばかりで笑ってしまいました(笑)ので、信頼性は高いんじゃないかなと。

 

ひとまず今回は前編として、年代順に5作品をご紹介。

あなたを魅了するディープな奇妙が見つかるかも……!?

◆ 追いかけた男 (1990年8月9日 - 第1シリーズ)

屋根を修理していた男をカナヅチを持った強盗と勘違いした警官・二宮は降りて来いと脅した。

ところが、その男は塀から落ち、頭を打って死んでしまう。

困った二宮は、架空の犯人をでっちあげ、犯人の後を追うふりを始める……。

 

──俺はな、嘘が大嫌いなんだ。そういう奴は人間として許せねえんだ!

 

最初は第1シリーズから片岡鶴太郎主演のこの一本。

第1シリーズは、突飛な設定ではなく、出来るだけ日常に近い所を目指していたそうなので、今から見ると地味なストーリーが多い印象ですが、その分、今もどこかで起こりそうな"近さ"たっぷりの作品が多いのが特徴です。当時の雑誌なんかを読むと「リアルな第1シリーズが一番良かった」なんて声がファンの間にも結構あったようですね。

 

そんな初期シリーズの作品なので、ストーリーはハッキリ言ってベタです。オチも勘のいい人ならすぐに判ります。……が! それであっても、演出の醸し出す雰囲気と脚本のちょっとしたセンスのお陰でこれがなかなか良い佳作に仕上がっているんですよね。じわじわと非日常に入り込んでいく画作りと良い、ラストの皮肉の効いた一言と良い、オチが判っていても奇妙な世界を堪能できる一篇です。

 

データベースさんのあらすじを読んだだけで判断するのは非常に勿体無い! 本作の魅力はストーリー単体ではないんですよね。日常に近い非日常が好きな方はぜひ一度ご覧になる事をオススメしたいと思います。こういう画でも魅せられる作品が新作にも欲しい所。

◆ 目覚まし時計 (1991年5月2日 - 第2シリーズ)

会社の先輩に怒られ落ち込む友里子は帰り道アンティークショップでひとつの目覚まし時計を見かけ、店主の言葉につられてつい買ってしまう。

その時計は持ち主の不幸を取り除くという不思議な時計だった。

 

──違うの、もう今は違うの。ねぇ、言って。あの時の話、あの時の大切な話……

 

第2シリーズのハートウォーミング作品の中では10本の指に入るのではないかと(個人的に)思う作品です。なんといっても、同じ終着点であるはずなのに、主人公の行動原理が本来の物と大きく異なっている所がニクイですね。単なるハッピーエンドではなく、ちょっと捻りの効いた深みも感じられるなかなかの佳作。

 

ハートウォーミング物に抵抗のない方はぜひご覧いただければ……。オススメです。

◆ ボタン (1991年8月1日 - 第2シリーズ)

今まで一度も失敗したことがない殺し屋コンドルがアドバダ共和国の王女暗殺という大仕事を引き受ける。

だがボタンが取れたことで予想もしなかったことが次々起こり始め……。

 

「な、なんでしょう!?」「……ボタン」

 

一番面白い所に言及すれば、すぐさまそれがネタバレになってしまうというジレンマを抱えている作品。本作以前からバラエティやあの番組でもよく使われているワンアイディアではありますが、これを堂々とドラマ化した勇気とセンスに感服するばかり。秀逸なストーリー構成も鋭い風刺が無くとも、見ていて単純に楽しいこういう作品って私は結構大事だと思います。

 

脚本は「帰れない」「女優」を手掛けた野依美幸さん。「ライバル」「ざしきわらし」といった直球の作品にも携わっている反面、「女優」「ネチラタ事件」に代表されるような普通の作品とは一味違った珍作にも意外と関わっているんですよね。

 

本当ならば長々語りたい所ですが、こればっかりはぜひ見てくれとしか言い様がありません。正直これが隠れていること事態が意味わかりませんよ! 世にもマニアを名乗るなら一度は見ておいて損は無いでしょう。「世にも奇妙な物語」でしか実現できなかったクリエイター精神の真髄はここにあった……!?オススメです。

◆ 柵 (1991年8月22日 - 第2シリーズ)

しがないサラリーマンの横山は世の中が面白くない。

ある日、酔っ払ってよろけた弾みに、他人の家の庭柵に首を突っ込んでしまう。

必死にもがくが、どうしても首が抜けず通りがかりの女性に痴漢と間違われたり、泥棒に襲われたりする。

 

──きっと神様が柵に嵌めたんだ。人生を無駄にしてるって。そうなる運命だったんだ。よし、この柵から抜けたら会社を辞めてやろう。俺はもっと自由になってやるんだ……。

 

例えば貴方が学校や仕事先で嫌な事があったとして、とにかくもう早く家に帰りたい一心で家路を急いでいたとします。そんな時、この主人公の様に頭が柵にハマって抜けなくなってしまう。人気のない道。誰が通るかわからない。そう考えただけで、何だか背筋が冷たくなるような、いつもの帰り道が少しだけ異世界に変わってしまった様な……。

 

予想外の展開はありません。あっと驚くどんでん返しもありません。現実の延長線上から外れる事もありません。ただ、柵にハマってしまった男が、比喩も含めた"柵"から自由になろうとする成長物語でございます。

 

それを聞いて「なーんだ。面白くなさそ」と思った人はご用心。本当の「奇妙」とは、日常の中に潜んでいて、そしていつも我々の事を見ている事に気づいていないだけなのです。見終わった後、自分の周囲にも多くの奇妙が潜んでいる事に気づいてしまえば、これまで物語が少しだけ輝いて見えるかも……。

 

ちなみに、現在チャンピオンで連載中の人気ギャグマンガ浦安鉄筋家族」でも全く同じネタが使われた事があり、もしかすると、作者の方もお気に入りのエピソードだったりするのかもしれないですね……(笑)

◆ 冗費節減 (1991年9月19日 - 第2シリーズ)

あるときから、会社が時間節約のために何でも省略して話すようになっていた。

しかし、その方針についていけないツトムは同期のさやかに訳してもらうことにするが……

 

「アイスミルクティーください」→大変時間がかかる

「アイミティーください」→やや時間がかかる

「ア」→時間がかからない

 

某ファーストフードチェーンでは、注文からお客に商品を出すまでの時間をキッチリ守るように指導されているそうです。その時間は僅か7秒。これを聞いて「早い!」とか「すごい!」とか「お客の事を考えている」と思う方もいるでしょうが、そんなに早くする必要ってあるんでしょうか。

 

ふと立ち止まってみると、それってかなり従業員の負担になっているんじゃないか?とも思ったりする訳です。果たして、利便性、合理化を進めてた我々の生活はあの頃と比べて本当に良く、そして快適になっているのでしょうか……?

 

本作が放送された1991年から、今年で早22年が経ちました。

当時の段階で社会から無駄を省き、効率化を推し進めてきておきながら、今でもその勢いは加速するばかり。某企業では、時間短縮の為に従業員に廊下を歩かさず、常にダッシュしないとブザーが鳴る様な仕組みを導入している…なんて耳を疑う話もあるそうです。

 

そこまで行くと、現代は本作をバカバカしいシュールな話だと笑う事って出来るのでしょうか。初めは、有り得ない言葉の略し方に緩んだ口元が、徐々に険しくなっていくのは、奇妙な未来の予兆を、本能が感じ取っているせいなのかもしれません。

 

将来ネットで「7秒なんて遅すぎる! ○○なら3秒でやってくれたのに!」なんて書き込みが現れない事を祈るばかり……。奇妙な世界の深淵にもう少しだけ足を踏み入れてみたい、そんなあなたにはぜひオススメです。

 


 

というわけで、「ほんとは面白い?隠れた世にも奇妙な物語」前編でした。

 

予想外のどんでん返しや、秀逸なストーリー構成はあまりなく、数々の名作群と比べてキレも若干落ちてしまうものの、個人的には好きな作品ばかりを集めているので、一通り名作を見終わり、通の方面にも興味のある方には良いラインナップになっているのではないかなと思います。

 

というかですね、今回挙げた5作品だけでも「ズンドコベロンチョ」級にインパクトの大きい作品が結構集まっているはずなのに、この隠れっぷりは本当に信じられなくて、ヒトケタ候補をまとめてビックリさせられたんですよ!(笑)

 

わざわざウチで取り上げるまでもない名作達は様々なサイトで語り尽くされているわけなので、ウチとしてはもう少し、こういった隠れた佳作にスポットを当てていきたいですね。ニッチすぎるかもしれませんが……(^^;)

 

次回「ほんとは面白い?隠れた世にも奇妙な物語」後編は、来月上旬頃を予定しています。

その間に、あまり言及されていない作品群に注目してみては……?。次回をお楽しみに。