世にも奇妙な物語 ブログの特別編

「世にも奇妙な物語 ファンサイトの特別編」管理人のブログです。

貴重インタビュー発見

2000年の映画公開時は、とにかく多数の雑誌やWEBで世にも奇妙な物語が扱われており、私が収集している番組関連の資料でも、この時期のものは非常によく引っ掛かります。

 

大抵が映画宣伝に絡めたものではありますが、さりげなく貴重なインタビューが盛り込まれていることがあり、映画関連のつもりで購入してみると意外な発見があったりと、驚きのふり幅が一番大きい資料もこの時期の物が多かったりします。

 

と言う事で、今回は最近集めた資料の中で一番興味深かった記事をご紹介。『世にも奇妙な物語』の生みの親の一人、フジテレビ編成 石原隆さんのロングインタビューです。

 

石原「当時フジは深夜帯に編成マンを置いていて、深夜番組の開発に非常に力を入れていたんです。それに伴って、深夜のマニアックな番組が次々と生まれていったわけです。

 

そのときの僕らのスタンスというのは、視聴率は関係ない。とにかく話題になるような、トンガった、マニアックな番組を編成するということだった。

 

(中略)

 

僕らにとって深夜番組というのは、深夜で生まれて、深夜で人気を得て、深夜で終わる番組だったんですよ。

 

「奇妙な出来事」もそういう位置づけで始まった番組の1つで、とにかくドラマというジャンルで、深夜でしかできないような番組を作りたかった。

 

当時はトレンディドラマが爆発的に当たっていて、もちろん僕も見てたし、それが当たる理由もわかった。

 

ただ、テレビというのは1つの何かが当たると、みんな同じ所に行く傾向があって、他局のドラマもみんなトレンディドラマになっちゃってたんですね。

 

そんななか、深夜で自由にドラマを作って良いなら、自分が本当に好きな物にしようと思って、そこで浮かんできたのが「トワイライトゾーン」や「ヒッチコック劇場」のような世界だったんです。

 

こういうドラマは僕は好きなんだけど、今の日本には無い。だったらそっちを作ってやろうと思って。

 

「奇妙な出来事」のスタッフは僕を含めて、プロデューサーの塩沢浩二も、ディレクターの落合正幸星護も、脚本の戸田山雅司も、誰一人ドラマを作った事がなかったんですよ。唯一撮ったことがあるのは小椋久雄さんくらいで、鈴木雅之はADでしたから。

 

ただ、それは新しいドラマだからドラマ経験のない人の方が良いんだという意識の下にあったわけでなく、単純に貸してもらえなかったんですよ、経験のあるスタッフを(笑)

 

ディレクターはゴールデンのドラマで手いっぱいだし、脚本家も深夜のワケのわからない番組はやりたがらなくて、結局「IQエンジン」とか一緒に深夜番組を作っていた仲間とやることになった。戸田山さんの台本なんて、レポート用紙に横書きでしたからね(笑) それくらい何も知らなかった。

 

そうやって作った「奇妙な出来事」というドラマは、僕にとっては気持ちのいい、ドラマってこういうモノだよねというドラマだったんですが、それがドラマとしての正しい形だとは思わなかった。

 

先輩の監督やプロデューサーにも、あれはドラマじゃないって言われたし、僕自身もこれはドラマじゃないって思ってた。自分で違和感があっても、みんなに認められてるんだから、そっちの方が正しいんだって思っちゃうんですよね。それに違和感を持つ自分の方がおかしいんだって。

 

今では「奇妙」のようなストーリーテリングで見せるドラマこそが僕のやるべきものなんだって思いますけど、その確信を得るのは、ホイチョイプロダクションの人たちや三谷幸喜と一緒に仕事をしだしてからですね。

 

実はこっちの方がアメリカ映画に近いし、世界標準なんじゃないかと思う。むしろ日本のトレンディドラマの方が特殊なスタイルなんじゃないでしょうかね。

 

(中略)

 

「奇妙な出来事」は評判は良かったけど、視聴率的にはかんばしくなかった。

 

あれをゴールデンにしたのは、偶然というか、90年4月のドラマ企画が急に飛んじゃって、それで緊急会議が開かれて、会議の席って何か意見言わないとカッコつかないじゃないですか。それで「奇妙」はどうですかって(笑) すごくその場しのぎのアイデアだったんですよね。

 

だって、4月スタートの番組なのに、タモリさんにオファーを出したのが2月の半ばなんですよ。そんなのタモリさん的にはあり得ないんですよ。

 

たまたま、タモリさんのマネージャーさんの前田さんと言う方が「奇妙な出来事」が大好きで、無理やりスケジュールを調整してくださった。そういう意味では奇跡的な番組でしたね、最初から。

 

(中略)

 

「奇妙」をやるからにはゴールデンでも通常のドラマとは違うスタイルでやりたかったし、8時台と言う割とカチャカチャした時間帯ということもあって、オムニバスでやろうとは決めてました。3本オムニバスだと1つのエピソードにかけられる時間は14分30秒なんです。

 

で、その時間で起承転結のあるドラマを造るのは不可能なんですよ。起転で終わりみたいな、そういう感じのドラマの尺なんですね。そこで、プロット最優先という「奇妙」独自のスタイルが生まれた」

 

これ以降は映画について言及しているので割愛しますが、たった2ページの映画宣伝記事の割には、思ったよりも中身が濃いインタビュー内容でした。

 

タモさん起用の経緯なんかは、深く突っ込んだ資料でも「タモリもこのようなドラマが好きで快諾した」程度のことしか触れられていませんでしたが、元マネージャーの前田猛さん(故人)の協力も大きかったんですねぇ~。

 

しかし、放送の2ヶ月前にオファーとはかなり無茶なスタッフ…(^^;) 成功した番組だからこそのエピソードになった訳ですけどね。

 

なお、石原さんはインタビューの最後をこのように締めくくっています。

 

石原「もちろん、今後も「奇妙」は続けて行きますが、僕にとって「奇妙」ってもうドラマのタイトルじゃないんですよ。どっちかというと枠のタイトルに近い。

 

スタイルに合えば何をやってもいいよという枠を与えられている気がするので、作家も演出家もなるべくドラマ畑とは違う人を取り込んでいけたらな、と。

 

2年後とかの「奇妙」が今のメンツとは全く違うというのが理想ですね」

 

ここを読んで思わず「そうそう!」と頷かずにはいられませんでした。

 

確かに「世にも奇妙な物語」って、ドラマのタイトルではなく「金曜ロードショー」や「土曜プレミアム」のように「枠の名前」に近くなっているんですよね。

 

ある程度の実績があり、オムニバスなので、もはやどれだけ冒険しても、無名の作家や演出家を1人や2人採用しても大丈夫(実際、2000年以降は石原さんの言うように常連スタッフもガラリと変わり、近年は劇団の作家や新人の映像作家の参加も目立ち初め、その目論見は実現の物となりましたが)になっているわけで、すっかり1年に2回だけゴールデンにやってくる新人が自由に遊べる深夜枠のようになりましたしね。

 

個人的には、奇妙のコンセプトをしっかり守ったまま『新人ショートムービーコンテスト』のような番組にならないように願うばかりですが……優秀なスタッフの方々なので、その心配はあまりにも杞憂すぎますかね…(^^;)

◆ CS再放送情報

来年、2010年は世にも奇妙な物語放送20周年の年。

 

それを記念してなのかどうかはわかりませんが、来年1月2日にCSで世にも奇妙な物語の一挙放送が行われます。一挙放送と言っても、過去にCSで放送された特別編のみですが、12時から23時まで11時間ぶっ通しで世にも三昧、おまけにCS初放送の「96冬の特別編」まで放送されるとなれば、ファンなら絶対に逃せません!

 

恐らく、既にリピート放送が行われた回はこれを逃すともう当分は放送されないと思われるので、金銭面から敬遠していた方は、この時を狙ってひと月だけ契約してみるのも手かもしれませんね。

 

94と95の特別編が権利関係により全部すっ飛ばされてしまったのは残念ですが、96冬はこれぞ世にも奇妙な物語らしい世にも奇妙な物語「追っかけ」のほか、撮影ために西村雅彦の毛を200本引き抜いた(笑)という怪作「先生の『あんなこと』」「夢の検閲官」や「時の女神」の原作者、筒井康隆原作「熊の木本線」など、バラエティ豊かな5編が放送されます。

 

個人的にオススメなのは「熊の木本線」。

劇中に出てくる熊の木節は原作者の筒井さんが、夢の中で聞いた歌をそのまま使用して作られた、誕生秘話までも奇妙な作品です。オチで評価が別れるでしょうが、日常に潜む奇妙作品が好きな方には十分オススメできる作品だと思います。未見の方は是非ご覧いただければ…!

◆ '09秋 DVD発売決定!

そしてもう一つ、09秋のDVDが2月17日に発売が決定しました。

 

通常なら放送から半年前後の発売になる所を、放送から4ヶ月と言う史上最短期間での発売に。もしかしたら春の放送に合わせて3月か4月に何か特別なDVDでも出るのではないかなどと勘繰ってしまいます。まぁ、早いに越したことは無いんですけどね(笑)

 

世にも奇妙な物語放送20周年の年に相応しい幕開けになること間違いなしな2010年。ファンにとっても良い1年になりそうで、今から来年が待ち遠しいですね。