2009年、最初の特別編。今回も色々な話が放送されました。
また前日には「ラジオの特別編」も放送され、こちらも変わった趣向で楽しめ、いつもより少しだけお得な春になったように思います。
それでは以下、TVの5話に加え、ラジオ版の3話も交えた8編の個人的な感想を。
≪世にも奇妙な物語 ラジオの特別編≫
◆「逆誘拐犯」★
テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞で優秀賞を受賞した春名功武さんの作品。
受賞作品の「フキデモノと妹」も、一風変わった作品でしたね。
この「逆誘拐犯」は、世にも奇妙な物語と言うよりも、星新一さんっぽい印象。
タイトルで「ん?」と思わされますが、無難にまとめたと言う感じですね。
ただ、ガングロメイクや韓流ドラマなど、少し時代錯誤の感が否めませんでした。
◆「ロボットの夜」★★
TV版では「輪廻の村」を担当した中村樹基さん原作の作品。
逃げてきたロボットが自分を襲うとしているのではと思わせておいてのあのオチ。
王道的ではありますが、今回の物の中では一番「世にも」らしい作品だったのではないでしょうか。
◆「親子FA宣言」★
テレビ版では「ボランティア降臨」の脚本を務めた佐藤万里さんの作品。
「親子FA」と言うアイデアはこれまた変わっていましたが、話としては、ベタな部類に入りますね。
ただ、最後は良い話と言う番組の構成も守っていた所は好感でした。
突然、今になって放送されたラジオの特別編。宣伝もなく、下手すれば気付かないままでした。
しかし……ラジオドラマだと世にも奇妙な物語らしさが無くなりますね。最後のロゴが出ないとやっぱり不完全燃焼。ストーリーも、時間がなかったのか、単なるショートショートが放送された印象です。
今後もあるのか、今回限りかはわかりませんが、非常に面白い試みでしたので、全体的な評価は★★★。商品化する可能性は限りなく低いでしょうから、今後は録音した物を大事にしたいと思います。
≪世にも奇妙な物語 '09春の特別編≫
◆「爆弾男のスイッチ」★★★
石黒正数さん原作の「スイッチ」を映像化したこの話。
予想はしててもドキドキしてしまう、題材は非常に好感触。市原隼人さんの弱気な演技も良かったです。
オチとしては、研究機関や企業の仕業と言うのは世にも奇妙な物語では珍しい物ではありませんが、ラストのセリフで上手くまとめたなと言う感じでしょうか。
◆「輪廻の村」★★
「前世の記憶を持っている村人」と言う題材で、何となく展開は予想できたのですが、やはり……。ツボを抑えたストレートなホラーでしたが、番組ではこの種のホラーは最近不発気味ですよね。
落合監督の退社はやっぱり世にも奇妙な物語にも大きな影響が出ているって事でしょうか。危惧した通り、伊東美咲さんのほんわかとした演技はやっぱりホラー物には合い難かったですね。やっぱり、前回の「死後婚」同様、和風テイストのホラー路線よりも、中村さんは「壁の小説」や「恐竜はどこへ行ったのか」と言った無国籍風の話の方が合うのではないかなと思ったり。
◆「クイズ天国・クイズ地獄」★★★
18年ぶりの出演である石原良純さんが初主演を果したこの作品。世にも奇妙な物語ではもはや王道のある日突然に奇妙な世界に入った主人公の物語でした。
しかし、このサラリーマンが突然変な世界に入って右往左往するのを描く作品って久々じゃないでしょうか。90年代後半~2000年代前半にはこのタイプの話が多かったので、今回凄く久々な感覚でした。
これは、昨今のクイズブームを揶揄してるんでしょうね。しかし、その仕掛け人であるヘキサゴンを放送しているフジであえてあんな事を言わせるのは皮肉が効いてます。
劇中で印象に残ったのは執刀医役で「第三舞台」の小須田さん。89年深夜の「IQエンジン」を彷彿とさせるあの声で問題を出されるとあの番組の大ファンとしては実に嬉しかったですね。狙ったのか偶然かは判りませんが(^^;)
もう一つ、あのシーンの問題、アルファベットの「スペル」は?と言っているので「T」じゃないんでしょうかね? 見ていて「あれ?」と思ったのですけども。
前回の「行列のできる刑事」のような実験的な路線を狙ったらしき印象を受けましたが、ちょっとB級路線を狙いすぎかなと言うのが本音ですね。もう少しストレートに描いても良かったのではないかと。しかし、「CM!」と三輪車の女の子のシーンはかなり好きです(笑)
でも、最後の地獄行きはいくら何でもブラックすぎませんかね……?
◆「真夜中の殺人者」★★★★★
1991年に発売された「世にも奇妙な物語6」に収録のオリジナル作品が原作。
始めて読んだ時から映像化すれば面白いだろうなと思っていましたが、18年後にとうとう映像化。個人的な思い入れがかなり強かったので評価は大甘の★5つ。
以前、映像化希望とサイトに書いた事がありましたが、規制の問題でまず無理だろうなと思っていた矢先に放送。スタッフも挑戦したってことでしょうか。抗議電話やメールが局に多数いってるんでしょうね。去年の「フラッシュバック」も「何て物を放送するんだ」と言う抗議の電話が結構来たそうですが、この時勢に良くやってくれました。昔は夜9時台で首が吹っ飛ぶわ血が飛び散るわのスプラッタドラマ「魔夏少女」みたいな物をファミリー向けに放送してたもんですが。まぁ、これも時代なのでしょうね。
話を戻しまして、この作品は原作以上に「女のする軽率な発言」をとことん皮肉ってましたね~。原作であった占い師や、幸せそうに眠っている夫婦を殺さずに去る印象的なシーンもあって安心しました。
忠実でありながら、最後まで緊張感を保った展開はやっぱり良いですね。期待を裏切らなかった1本。感激しました。原作では、「U」が欠けたまま、女二人が乾杯して終わるのですが、こちらのラストは明るめで、よりイヤ~な感じのブラックさを引き立たせてましたが、そう言う脚色をされた訳ですか。なるほど。
しかし、いくつかブログを巡って見ると、これを「感動物」だと解釈している方がかなりいてオイオイ(^^;)と思ったり。これは「女のために殺人を犯してまで愛を伝えようとした男の物語」ではなく、「女が考えもせず軽率な発言をしたせいでとんでもないことになった物語」なんですよね。
スタッフもこの辺を考慮してか冒頭でタモリさんに言葉の危険性を喋らせていたんですけども…。この辺の解釈の違いも抗議に繋がりそうです。実際、批判されてる方はこの種の解釈をされてる方も多いようでした。あそこで良い曲が流れたらそう解釈してしまうのも無理はないのでしょうか。
ちなみに、難点をあげるとスイッチの下り等がちょーっと露骨かなと……(^^;) あの辺で気付いた方も多分多いのではないでしょうかね。
◆「ボランティア降臨」★★★★
笑ゥせぇるすまんにもこんな話があったな。と言うのが第一印象。
じわじわ日常を侵食され、自分も同化してしまう。ただそれだけの話でありながら静かに怖いんですよね。個人的なイメージですが「厭な子供」と同じような雰囲気を感じました。
あらすじだけだと、不思議系の小説ではよくあるタイプの話ですが、大竹さん高島さんの演技、「古畑任三郎」の演出で評価を上げている河野さんの演出が相まって、実に奇妙な1本に仕上がっていました。演出と俳優陣がしっかりしているからこそ、物語の良さがしっかりと出たのではないかと思われます。
劇中の「主婦」と「ボランティア」の話は、思わず頷いてしまいます。母親を見ていて、同じ事を思った事がありました……。考えさせられますね。
今回の中では一番世にも奇妙な物語"らしい"作品だったと思います。
◆ 総評
さて、今回の全体的な評価は★★★★。
ここ最近、感動物の多さがファンには不評でしたが、今回は全く無し。ブラックさのみを取り揃えた回で久々に満足、と言うよりお腹いっぱいでした。次回も楽しみです。今年の10月で「奇妙な出来事」放送20周年なので、秋の特別編でも何かあれば良いのですが。
とりあえず今後は、来週4月6日放送の「フジテレビ50周年記念 ドラマ映画50年スペシャル」で、世にも奇妙な物語のお宝映像か何かが出ることを期待して待ちたいと思います。