世にも奇妙な物語 ブログの特別編

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'20秋の特別編 感想

前回のEDで発表されていた『'20秋の特別編』の放送が終了しました。

 

前代未聞の春&秋同時撮影という衝撃のチャレンジにより、コロナの行方がどうなろうとも放送が決まっていることは本当に救いでした。そしてスタッフ・キャストの皆さんの遵法精神のおかげで「ほん怖」の二の舞にならなかったことも一安心! (よく知らない方はご自分で調べてみてください)

 

そんなわけで、30周年という記念の年を締めくくる今年最後のSP。今回も私の独断と偏見による感想を。評価は★5つが最高となっています。

◆ 第1話「コインランドリー」★

原作は2019年にWebサイト『ジャンプ+』に掲載された鈴木祐斗さんの漫画「ロッカールーム」。公開直後からSNSで大きな話題となり、「世にも奇妙な物語みたい!」「世にもで映像化して欲しい」との声もあったため、当時読んだことがある方もかなり多かったのでは。

 

私は御存知の方も多い様に面倒くさいマニアなので、当時読んでみた際は「手堅くまとまってはいるけど『マジシャンのポケット』や『美女缶』とか似たようなネタの作品もあるし、オチも世にもに採用されるほどではないかな~ハハハ」なんてお気楽に判断していたんですが……とりあえず多くの方に土下座させていただこうと思いますm(_ _)m

 

 さて、そんなわけで原作を知った上での世にも版。「墓友」「サプライズ」の松木創監督3年ぶりの復帰作ということもあり、久々のブラックな松木ワールドを堪能できることを期待していました。序盤は所々ドキッとするカットもあって、十分楽しめていたものの……なんだか色々残念な仕上がりになってしまったような(- -;)

 

例えば、原作では仕組みを主人公がある程度把握した上で行動していましたが、ドラマではそこを完全に伏せたままどんでん返しに持っていくという構成に変更したため、やや終盤が説明過多になってしまったかなと。

 

また、ドラマでは原作での余韻を残すオチをバッサリカットして、真相が明らかになった所で突然ブツリと落とすという『昨日公園(2006)』的な『イヤ~な後味残し』の手法が取られたわけですが……どうも本作はそれがハマってないなと。

 

過去の松木監督作品は突然バッサリと終わらせる演出を割と行っており、それが良い効果を産んでいる時もありましたが、今回は3年前の「夢男」の時と同じく『そこで切るのはちょっと早すぎでは?』という印象を強く持ちました。「これからどうなっちゃうんだ…」よりも「えっ、ここで終わり?」感とでもいいますか。これなら原作のラストをそのまま付け加えていても良かったのでは。

 

さらに、原作をそのまま映像化するには尺が足りなさ過ぎるので、ヒロイン役を投入するという案は正しかったと思いますが……主人公の優しさに好感を持っていたとはいえ、数回会っただけの相手にあそこまで入れ込んで介入してくるというのは、さすがにちょっとアブない人なのでは…?と思ったりも。男から見たらちょっと怖いですよ。

 

そういったことから、個人的には演出以上にシナリオ面が難ありだったなという印象。種明かし後も『よくわからない』と言われるのを恐れすぎた筆致になっていたかなと。特にラストの「つまり、俺も……」というセリフはあまりにも野暮すぎるのでは。もしかしたらスタッフ側からの注文だったかもしれませんが、良い効果は生み出してなかったように思います。

 

近年関連記事などで「もっとわかりやすく!」という注文が付けられることがあるのは知っていましたが、いくらなんでも…というケースが度々出てくるのはどうにかしてほしいなぁと。(本作のオチがわからないという声もネット上にチラホラあったので、そういう時代なのかもしれませんが)

 

ここまで来ると、1991年の「そこでは、お静かに」や1992年の「おやじ」辺りの不親切ぶりが逆に愛おしくも…(^^;) 当時のスタッフも子供に理解できない内容でも放送するという目論見があったようですしね。

 

そんなわけで評価は厳し目に見て★1つ。脚本・演出・アレンジ、どれも同じ目的に向かって狙いを定めていたはずなのに、何故かすべてが上手く絡み合わない作品になってしまったなと。ファンにお馴染みの松木監督作ですが、個人的にはとても良い時と残念な時とのギャップが激しいのが長所でも欠点でもあるので、次回作では「墓友」「夢みる機械」のようなホームランを是非期待したいですね。

 

なお原作版はWebにて絶賛公開中ですので、未読の方は是非。

ロッカールーム - 鈴木祐斗 | 少年ジャンプ+

◆ 第2話「タテモトマサコ」★★★★

これまで「ニュースおじさん」「ボランティア降臨」に出演し、名作請負人と呼んでも差し支えないであろう大竹しのぶの主演作。私としても今回の大本命として期待してました。

 

率直な感想としては、やっぱり大竹しのぶ主演作にハズレ無し!

このインパクト、この圧。『番組史上最強の超能力系主人公』とのコメントに間違いはなかったですね。あまりに便利な能力すぎて『こんなの一体どうやって倒せばいいんだ!』と少年漫画を読んでるような気分になってしまいました。

 

序盤無口だった所から、突然饒舌になる演技の切り替わりもさすが名女優の風格。確かにこのキャラを大竹しのぶでキャスティングするしかなかったのも頷けます。

結局は己の力によって自滅してしまうというギリシャ神話のメデューサ的な展開になりましたが、ベタながらもカタルシスを感じる筆運びによってそこがバッチリハマって好印象。鼻血という視覚的効果も良いアクセントになっていたのでは。

 

僅かな不満点としては、やや間延びした部分があったことと、やや少年漫画的展開に重きを置きすぎていた部分もあったため、もう少し奇妙な世界観を堪能させてほしかったな~という所でしょうか。そんな部分もあり★4つ。

 

 

放送後はネット上でもかなり評判が良かったので、この調子で今後もこういった役者の魅力を引き出せる名作の登場に期待したいですね。

◆ 第3話「イマジナリーフレンド」★★★★

前回、姉の広瀬アリスに続いて、広瀬すずが番組初登場。演出が同じ植田監督であったためか、「しみ」と同じレストランをロケに使用するなど、隠しリンクを用意する小ネタもしっかり仕込んでいた模様(^^;) さすがです。

 

展開としては二転三転ありつつ、ハートウォーミングに落とすという手堅い作り。また、ここに来るまでの2作が良くも悪くもアクが強かったので、18年連続参加記録更新中のベテラン・植田監督らしい見慣れた画作りはホッと一息つくのにピッタリだったように思います。

 

特にユキちゃんをフルCGではなく人形の操演にした所が『そう!わかってる!』と力強く頷くばかりでした。

 

個人的に「メリーポピンズ」や九重佑三子版の「コメットさん」、ヤン・シュヴァンクマイエル作品といった実写に人形やクレイアニメを合成するタイプの作品が好きなこともありますが、私は「世にも」を『究極のB級ドラマ』かつ『片足は絶対に日常の領域に着いているべき』と思っている人間なので、大金をかけたハイクオリティな映像表現よりも、こういった一見チープに見えつつも現実味のあるアナログ演出の方がピッタリだと常日頃思っているんですよね。(たまにいくら何でも…という演出もありますけど(笑))

 

そういった映像の面白さもありつつ、世にもの王道的な展開とも相まって視聴後の印象は好感触。ただ、娘をあんな風に失ったのに、未だそこまで心を入れ替えてないっぽい母親のキャラクターは妙なリアルさを帯びていて「なんだかなぁ…」と思ったりも(^^;) まあ、でも主人公が笑顔になれたら良しですね! ★4つ。

◆ 第4話「アップデート家族」★★★

原作は『第2回 うすた京平漫画賞』にて準大賞を獲得したチョモランマ服部さんによる同名作品。

 

改めて原作を読んでみると「全部ドッキリでした」という、そのまま映像化するにはいささか雑すぎるオチになっていたため、ややブラックに脚色した判断は正解だったなと。(ちょっとだけ『マンホール』(2002年)のラストがチラついたりも)

 

放送時間も短めに、テンポ良くギャグを繰り出していくおバカ加減は、昨今の『世にも』ではお馴染みのシュールギャグコメディ枠としても、今回のシメとしてもピッタリだったように思います。★3つ。

 

なお、後で知りましたが、犬のコロンちゃん役ことハナちゃんは、ゲーム実況で有名なYoutuberの加藤純一さんという方の飼い犬だそうで、話によればスタッフから直接オファーが来たとのこと。Youtuberをチェックする世代が番組の中心部に来はじめているとは、今後の番組も色々変わっていくんだろうな~とちょっぴり感慨深くもなりました。

 

こちらの原作も、現在『ジャンプルーキー!』にて無料公開中なので、気になる方は以下のリンクからどうぞ。

アップデート家族 - ジャンプルーキー!

◆ 総評 ★★

というわけで、30周年記念となる最後のスペシャルが終わってしまいました。

 

まずは、年2回の放送が無事出来たことに対して、スタッフ&キャストの皆さんに本当にお疲れ様でしたと言いたいです。インタビュー記事等から窺い知れる撮影状況だけでも相当な苦労があったようですし、春頃は諸々覚悟していた部分もあったので、例年と変わらず2回のお祭りを楽しめたことには感謝の言葉しかありません。

 

その甲斐もあってか、前回に引き続き2桁を維持する10.1%という好視聴率を記録し、ドラマ部門第8位。さらに、一週間のフジテレビ全番組の中では第3位。平均視聴人数は759万人、1分以上番組を見た到達人数は1964万人でドラマ部門第1位。内容面でも特に『タテモトマサコ』の高評価の声がネットでも散見され、成績・内容共に一応成功したと言っても過言ではないでしょう。

 

ただ、やはり4話は物足りないかなというのが今回も。昨今のテレビ不況により番組制作費は10年前よりだいぶ下がってしまっているようなのですが、サクサク見れるテンポの良さはやっぱり大事にして欲しい……! ワガママなのはわかっているんですけどね……!

 


 

さて、ここからは今回どうしても言いたくなってしまった不満を。

いつも通り面倒くさい内容なので、興味ない方は読まなくて大丈夫です。

 

 

ではいきます。

まずひとつめは『30周年のお祝いムード』がほぼ皆無だったこと。

 

「世にも」は2000年の10周年以降、5年ごとに何かしらアニバーサリイヤーであることに触れてきたわけですが、今回は何故か番組内ではその件に関してほぼスルー状態。

 

コロナ禍もあり、予算削減もあり、25周年ほど大々的にお祝いできないことはわかっていたものの、テラーの口からでさえその辺りのことが一切触れられていないのはさすがに淋しかったですね。そこは撮影や予算関係ない領域ですし。

 

 

ふたつめは、『PR企画での西野ン推し偏重化の兆し』。

今年、広告関係者で知らぬ者はいないACC賞で銀賞まで取ってしまった西野ン企画。つい最近YouTuberとしてもデビューし、チャンネル登録者数5万人を突破するなど着実に結果を出している彼。

 

私も定期的に覗いては、動画を楽しんで見させていただいております……が、最近ちょっと西野ン周辺を見ていて「危険だな…」と思うようになってきていたり。

 

そもそも、ここ4年ほど「世にも」のPR企画周りを担当しているのは面白法人カヤックというイベント企画会社さんで、(私が調べた限りでは)番組スタッフは企画立案&運営に関してそちらにほぼお任せしてるようなんですね。

 

で、そこの世にも担当チームの方々が、どうも西野ンというキャラクターとその人気ぶりに感激してしまったせいか、思い入れがだいぶ深くなってしまったようなんですよ

 

あえてどなたかは申しませんが、西野ンの中の方も『ずっとこの仕事だけしていたい!』と言うほどの入れ込み様で。ご自分が以前から好きだという漫画や趣味のレトログッズ収集を西野ンの趣味として設定してしまうなど、このまま本当に西野ンになってしまうのでは?と心配するほどだったり。

 

もちろん、PRスタッフさんの頭の中には今後西野ンをさらなる人気キャラクターに仕立て上げて、番組PRを容易に行えるインフルエンサーに成長させる……という目論見もあると思いますが、最近のYouTubeを見ていると『西野ンファンとの交流が楽しい!』という方向性にどんどん突き進んでいて、PRを建前にした半ば趣味としての活動になってきている様相が……。

 

私個人も西野ンというキャラクターは好きですし、動画も面白いとは思っているんですが、今後のPR企画がそれ一辺倒になっていくならば非常に危険だなと。

 

マンネリへの懸念はもちろん、もしこれが今後『西野ンありきの企画立案』になっていくならば、これまで試行錯誤しながら様々なチャレンジを続けてきた『世にも』の精神にも反するんじゃないかなと。

 

もちろんPRはPRしてナンボですから、ウケる要素はどんどん使っていくのは企画会社として間違ってはいませんが、近年番組を構成する要素のひとつにもなりつつある部分で安易にウケを狙う方向に流れていくのは、本体にもあまり良い影響を与えないような気がするんですよね。難しい所ではありますが。

 

 

最後は、『横スクロール短縮ED』。

夏SPは次回予告があったための措置であろうことはわかっていたものの、そこは関係ない今回でもそこを踏襲しているのが地味にショックでした。

 

近年どんどん短くなるOPムービーや提供バックのコメント併記に加え、奇妙な余韻に浸れるEDまであっさり処理にされてしまうと、哀しくて……あまりに哀しくなってしまって、三日くらい引きずったんです!!! (T_T) 今でもまだ引きずってますけど。

 

いやね……気持ちはわかるんですよ。淡々とEDを流してたら視聴者が離脱してしまうので、このテレビ不況の中、何とか最後まで引き止めて少しでも数字を上げようと、何とかしようという今の若手Pの方々の苦肉の策なのは。

 

でも、哀しすぎるんですよ!!(T_T)

 

去年の『'19雨の特別編』での『スタッフの反対を押し切って決めました(笑)』事件のこともあり、どうもここ2年ほどの若手プロデューサー陣は「世にも」に思い入れが無さすぎるんじゃないかと。流れ仕事すぎないかと。数字しか見てないんじゃないかと。やることなすこと、最低限の番組愛さえ感じないんですよね。

 

本当にもう、30年の歴史の中で最も番組が軽く扱われている様を、現在進行系で見せられているのが、マニアとしては哀しくてしょうがないです。そういう傷心もあったため、今回は★2つ。

 

 

後藤P帰ってきてくれ~~~~~!!!!!!(T_T)

 

 

 ……というわけで、以上総評でした。

 

不満点を挙げだすとキリがないですが、めいっぱい楽しんだのは本当です。こうやって文句もいいつつ、なんだかんだ見続けちゃうのが、世にもファンの業じゃないですか。……ね?

 


 

さてそんなこんなで改めまして…スタッフ&キャストの皆さん、今回もありがとうございました!

 

色々と不満点もあれど、30年目の奇妙を無事迎えられたことは本当に幸せでした。

 

いやー30年ですよ。当時XX歳だった私も今ではすっかりいい大人になってしまいましたが、初めて世にもを見た時の興奮と感動は未だずっとあの時のままなような気がします。

 

思えば、世にもに使われた小説や漫画に手を出して、様々な出逢いが広がっていきました。モチーフになった映画や使われていた音楽も聞いて、そこからさらに素敵な出逢いがあって───自分の中に生まれたエンタメの世界が広大な物になったのは間違いなく『世にも』があったからですし、物語の面白さに触れた原点でもありました。

 

これから番組は40周年に向かっていくわけですが、『浜の真砂は尽きるとも世に奇妙の種は尽きまじ』という言葉もあることですし(?)、まだまだ怖くて愉快で素敵な奇妙な物語が我々を楽しませてくれるに違いないでしょう!

 

そして、そんな素晴らしい未来に心躍らせているのは、きっと私だけではないはず。

 

これから先の10年も、ぜひ奇妙な世界の扉の前で待ち合わせしましょう。

 

 

『世にも妙な物語』30周年。本当におめでとう!