今年最初のお楽しみ『'20夏の特別編』の放送が終了しました。
当初は春SPとして5月23日の予定だったものの、新型コロナの影響で一部作品の撮影が不可能となり放送延期。結果、26年ぶりとなる夏季放送が実現という異例の新作SPとなりました。
30周年という記念すべき年最初の回でありながら、奇妙な現実に翻弄されてしまった今回のSP。本編ではこの状況を逆手に取った挑戦も色々行っている様で、世にものチャレンジ精神は未だ失われていない模様。
そんなわけで、今回も私の独断と偏見による感想をつらつらと。評価は★5つが最高となっています。
◆ 第1話「しみ」★★★
前回大ヒットした『恋の記憶、止まらないで』『ソロキャンプ』を引っ提げ、彗星のごとく現れた新人作家 諸橋隼人さんと、『イマキヨさん』や『コールドスリープ』などでファンにはお馴染みの植田泰史監督という新旧タッグによるホラー作品。
ここ最近コメディと感動物中心だった植田監督久々のホラーというマニア的な興奮ポイントもあり、今回の大本命として注目しておりました。
内容としては、序盤からテンポ良くホラーを展開してからのどんでん返し。勿論、そこに至るまでの様々な伏線と深読みできる余白も用意して……といった、前作同様の諸橋さんの細やかな仕事ぶりはさすがの一言。
ただ、個人的にはいくつか「うーん…」となってしまった部分もあったり。
ひとつめは、どんでん返しがあるとはいえ、中盤までのホラー展開がややベタすぎる点。全体の構成から考えれば決して無駄な展開では無いと思うんですが、『本来の世にもの怖さってこういうこと(幽霊や呪い)だけじゃなかったよなぁ…』と、昨今のホラー物に関することまで気にかかってしまい……。この辺は『恋の記憶~』よりも直球だったせいもあるとは思いますが。
ふたつめは、同じ系統の『箱』(2015年)とどうしても比較してしまうという点。
これはSNSなどでもかなり言われていたので、恐らく同じ印象を持った方も多いはず。
別に同じアプローチによる話があっても全然構わないのですが、いかんせん5年前の作品だと、さすがにまだ記憶に新しすぎるといいますか、既視感が拭えないというか……。また、個人的に番組に求めている要素を比べると、どうしても『箱』の方に軍配が上がってしまう部分も。
とはいえ、一発目に相応しいパンチの効かせ方は好感触。提供横の『しみ抜きの基本は早めの処置です』というメッセージも、オチを踏まえてみれば「なるほど!」と。当初はてっきり洗濯のワンポイントアドバイスだとばかり…(^^;)
いつか同じタッグによる新たなアプローチのホラー作の再登場に期待も込めて★3つ。諸橋脚本、まだまだ注目するしかないですよ……!
◆ 第2話「3つの願い」★★
1話減少となった影響によるものか、史上最長となる40分という長編作品。CMを入れると実質ちょっとした一時間ドラマくらいの体感でした…(^^;) さすがに長過ぎた様な気もします。
さて、この種の短編ではすっかりお馴染みの『3つの願い』ものを土台に、新たに刑事サスペンス物としての視点を入れたことで、あまり見ないタイプの作品になっている新しさは◎。40分もの長編を書くにあたって、脚本家さんもこの部分にかなり助けられたことでしょう。
そんなファンタジー+警察+サスペンスという食い合わせの悪そうな要素同士を上手くまとめているとは思うのですが……如何せんあのラストはしょっぱいことになっちゃいましたね。
既にネット上でも散々指摘されているように、心臓や妻の出処はどうなっているんだと。
いや、わかります。わざわざテラーに『親殺しのパラドックス』の説明をさせたりしている所から見て、スタッフ間にそこの懸念があったことは容易に想像できるんです。
ただ、それにしても引っ掛かりがありすぎるんじゃないかと。
最初だけ魔人が用意していたとしても『無から有を生み出してるじゃん』『等価交換じゃないじゃん』って話になりますし、テラーの言うような事後選択モデルに当てはめようとしてもちょっと苦しいですし、いっそ平行世界の主人公から持ってきて、そこで回していると考えても何だか変なことになり……。
他の創作物なんかではその矛盾込みで楽しませる物もありますし、矛盾があること自体は悪いわけではないのですが、本作のような『つじつま合わせタイプ』の種明かしでそこを放置されてしまうと、逆に粗だけが目立ってしまうなと。
先日放送されていた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もそうですが、時間をテーマにした作品は矛盾がほぼ無くて面白いという所が一番の肝であり見せ所だと思っているので、こういう所で多くの視聴者をモヤモヤさせてしまっている時点で、あんまりスマートなシナリオではないなというのが正直な所。
長編としての意欲は買うものの、種明かしのツメの甘さとやや冗長気味だったことで★2つ。あんなことするなら最初に全部主人公に説明しといて欲しいですよね、ホント…(笑)
なお、パラドックスを克服できる説を思いつかれた方がいましたら、是非教えてください。
◆ 第3話「燃えない親父」★★★★
今年1月に起こった不倫騒動から初のドラマ出演となる杏主演の一編。ひとつ前の時間帯で放送されていた『ドッキリGP 2時間SP』では、騒動の発端である夫の東出昌大がゲスト出演というあざとさも印象的でした…(^^;)
さて、本作の感想ですが…今回文句なしのベストワン作品だと思います!
一個前の「3つの願い」でちょっと集中力が切れかけていた所で、ガラッと気持ちを切り替えられる清涼剤的な一本だったのでは。
父親が火葬できないというインパクト大の導入部からすぐさま掴まれ、ハートウォーミングとコミカルを適度に行ったり来たりする、緩急のバランス感覚もバッチリ。ラストはそれでも火葬できないというオチでも良かった所、ああいう素敵な落とし方でまとめた所も個人的には高ポイント。
ただ一点めちゃくちゃ気になったのは、オネェのジャスミンさんが登場する際にカルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ』を流すという、とても令和のテレビとは思えないベタを通り越した古臭いバラエティ風演出。
シナリオはほぼ文句無しの出来だったため、チープ感を出したかったのだとしても、今時日テレのバラエティでもやらないレベルのダサさ&全体からの浮きっぷりが個人的にはかなり引っかかりました。そこで減点して★4つ。
◆ 第4話「配信者」★
フジテレビ局内のみでの撮影&一人芝居中心という、コロナ禍で撮影できる物を急遽用意した感のある本作。他の作品と違って、確実に脚本コンペ通過していないでしょうね。
さて、世にもだけでなく大半のテレビドラマに通じることですが、ネット描写があまりにも類型的すぎると、なんだかもやもやとなってしまうんですよね。もちろん、配信を批判するコメントを出した所で展開上ノイズにしかならないのはわかるんですが、『とはいえ、リアリティが無いよなぁ…』と気になる自分がいるという。
さらに、本作はこれまで度々あったネット風刺ネタなのはわかるんですが、さすがに『バズるために好き勝手やっていたら罰が当たるぞ』というテーマは2020年にわざわざやるような物なのかなとも。そこを省いて見ても、あのラストは不完全燃焼感が残る仕上がりにもなっていたように思います。
ゲストキャラクターである西野ンの立ち回りがちょっと面白かったものの、単体として見ると"間に合わせ感"が強く感じられたため、★1つ。
◆ 総評 ★★
今年は新型コロナの感染拡大もあり、年内の放送はどうなってしまうのかとヒヤヒヤしていたので、まずは無事放送できたことがとにかく嬉しかったです!(T_T)
視聴率も1年半ぶりの2ケタ復帰となる10.7%で、ドラマ部門第8位。さらに、一週間のフジテレビ全番組の中で第1位&唯一の2ケタという結果に。
また、最近ビデオリサーチが新たに設けた『平均視聴人数データ』によれば、平均視聴人数は833.9万人。1分以上番組を見た到達人数は2139万人でドラマ部門第1位。これも、西野ンの頑張りのおかげなのでしょうか…(^^;)
さて、今回40分の長編やテラーパートが各話を繋ぐという斬新な構成など、様々な挑戦が感じられた一方で、やはりコロナの影響で妥協せざるを得なかったであろう要素も感じられた特別編だったように思います。
その大きな要因としては、実質『3話+短編』という構成になったためか、全体的に引き伸ばし、冗長気味なところ。世にもらしい"テンポの良さ"を損なう形になったのではないかなと。やっぱり話数は4話以上ないとキツいでしょうね。
大変な状況での撮影であったことは公式の記事などからヒシヒシと感じますが、『頑張ったんだから多少問題があっても大目に見てあげようよ』というのも、逆に失礼だと思っているので……30周年一発目ということもあり、厳しめに見て★2つ。
そんなわけで、内容としてはもう少しという感じでしたが、EDの『秋の特別編』予告サプライズには度肝を抜かれました……横スクロールの短縮EDという、個人的に地雷ど真ん中のやり口でありながら、そんな事さえ吹っ飛ぶくらいの衝撃でした。全編撮影済みの次回予告なんて、前代未聞ですよ。
初期からの伝統芸であるスケジュールギリギリ進行により、放送日に完パケテープが出来上がることさえあるこの番組のスタッフとは思えない手際の良さ。
こんなの我々の知ってる『世にも』じゃない!!
しかも周年企画のお約束なのか、秋編の方が力が入ってそう!(笑) さらに、コロナ第二波で万が一のことがあっても、確実に放送できる所も非常に安心。夏編はこっちに注力するために色々妥協した結果だったとすれば、しょうがなくも……ないか。
というわけで、最後に…スタッフ&キャストの皆さん、今回もありがとうございました!
世界を巻き込む大変な状況の中、史上初の見逃し配信の実施や、過去作配信など30周年らしい企画を何とか用意しようとしてくれたことについても感謝の一言。
欲を言えば秋以降もサプライズを色々期待したいところではありますが、ひとまずは「秋の特別編」の出演者の皆さんが、薬物・不倫・その他犯罪行為をしないことをひたすら祈っています!(笑)